宇佐美いちかの母、さとみが帰国。ひさしぶりに親子3人の日常を楽しくすごそうとする。
しかし逆に普段の孤独を実感してしまい、いちかは贈り物のケーキ作りに失敗しつづける……
前回につづいて、シリーズ構成の田中仁脚本。畑野森生演出に川村敦子作画監督で、画面も華やか。
全体としては、子供向けアニメとしては驚くほど台詞を抑制して、主人公の表情と目線だけで雄弁に語らせるドラマにまず感心した。たいした事件は起きず、外に遊びに行くこともなく、淡々と流れる時間を風景で演出。敵首領から見捨てられつつある敵幹部が一瞬だけ映る描写も、主人公の心情に同期して強調する演出として効果的。
プリキュアだけで6人もいる今作で、序盤と終盤を除いて親子3人だけ登場させる実験性もいい。コンセプトが明確になったことで、台詞にたよらず物語を理解させられる。何もない時間を描く余裕も生まれた。
また、仕事のため家族に会えない親と、その孤独に主人公が耐えようとする物語は、台詞を抑制した演出ともども7年前のシリーズ作品を思い出させる。
『ハートキャッチプリキュア!』第9話 スカウトされたお父さん!お花屋さんをやめちゃいます!? - 法華狼の日記
両親を笑顔で見送り続けた主人公の日々を同ポジションのカットで積み重ねて、ツバメの子育てを見て感情が決壊するまでを、言葉にたよらず描く。
しかし、結論は同じではない。上記の主人公は、あくまで幼い日々の回想。対する今作の主人公は、父子ですごす日々を重ねて、友人とともに信念をもって行動する生活をつづけている。
医療支援のため海外で活躍する母を認めて受けいれることは、プリキュアとなって戦う自分自身を認めるということ。場所は違っていても、心は同じところにあるということ。
青空を小さく飛んでいく敵に向かって、主人公はプリキュアとなって飛んでいく。そして物語の終わり、青空に小さく飛んでいく母の飛行機を主人公は見送る。そこが母子の戦う場所。