法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

映画『軍艦島』の最新予告を見ると、反乱映画としての出来は良さそう

シネマスコープの広さをいかし、広大なセットで再現された軍艦島の大きさと、そこで働く人々の蟻のごとき小ささが、きちんと映像として表現されている。
네이버TV

開始33秒の描写を見ると、当時としては近代的な集合住宅があったことや、そこで労働者の立場が階層的にわけられていたことも視覚的にわかる。

動乱が始まる後半も、さすがに現代の韓国映画界が大作としておくりだすだけの規模感がある。邦画でもこれくらいの労働争議を描いた作品を見たいものだ。


むろん、以前にまとめた史実における抗議活動と比べて、やはり娯楽活劇性を優先して誇張しているようではある。
韓国映画『軍艦島』を利用した歴史の否定がおこなわれつつある - 法華狼の日記

規模は別として映画に描かれるような脱出劇が試みられていた。失敗して流れついたと思われる死体を供養する碑も対岸に建立されている。
南越名海難者無縁仏之碑

「昭和20年頃、海岸に漂着した死体5、6体を川辺近くに埋葬した。朝鮮人であるか否かについては不明であるが端島 炭鉱の労務者ではないかと思う」という旧高浜村助役の証言がある。

 1986年(昭和61年)6月28日、長崎在日朝鮮人の人権を守る会 代表 岡正治(故人)氏の立会でその発掘が行われた。その結果、 4体の遺体が確認された。収容された遺体は火葬され、南越名海難者無縁仏之碑の下に改葬された。

(長崎在日朝鮮人の人権を守る会資料集「原爆と朝鮮人」参照)

炭鉱夫の抵抗運動そのものは大小さまざま存在しており、軍艦島でも1944年8月にガス事故をきっかけとして約100人の中国人が入坑拒否をしたという。 主として日本人が働いていた1897年には700人規模の入坑拒否運動もあったという。さまざまな軍艦島 - 軍艦島を世界遺産にする会 公式 WEB

とはいえ予告で映る戦闘などは、劇映画としては珍しくない範囲の、意図もわかりやすい誇張だ。
下記記事の監督コメントを読むと、歴史考証しつつ映画らしさを優先したことが明言されているようだ*1
"국뽕 NO"…'군함도', 韓 영화 새 역사 쓸까 [종합]

リュ・スンワン監督は「最終的には事実に基づいて創作された話だ。1944年春から1945年夏までの背景にした国民総動員令によって徴集されたが、本人の意志ではなく、まま、あるいは騙されて徴集された人々の話を解いて降りた」と「歴史的な事実の背景には、実際にあり、軍艦も呼ばれる島のセッティングは、可能な限り考証をしようとした。セッティングされた時代的空間の設定は、可能な限り事実に近い描写しようとした」と伝えた。

現実に力を入れて考証に徹底的たのは時代的、歴史的背景を正確に描き出してたかったものだけであり、この映画の内容は、別個であることがリュ・スンワン監督の説明だ。「ドキュメンタリーにする考えもなく、サスペンスに力を与え、映画的な快感に集中するなど、映画としての機能を充実しようと最善を尽くした」ということだ。

当時の炭鉱夫が強制連行され、苦しい労働をしいられていたことは、日本の歴史学でも史実とされている。その募集過程において重要なのは意に反したり騙したりしたことであり、官憲の直接的な暴力が必要条件ではないことを監督はしっかり把握しているようだ。
もちろんフィクションに対して批判することは個人の自由だ。しかし開示されている情報から判断するかぎり、過去の日本を擁護するためにフィクションを抑圧するような抗議が正当化できる映画とは思えない。

*1:引用文はgoogle翻訳をそのまま用いて、カギカッコのような記号のみ修正した。