法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第14話 お嬢さまロックンロール!

ライブ活動で歌っていた立神が、スーツ姿の青年につれさられた。それ以来、パティスリーに姿をあらわさない。
心配した宇佐美たち4人が立神家へ行くと、そこには大豪邸がそびえ、ドレスを着せられた立神があらわれた……


上野ケン作画監督に田中仁シリーズ構成脚本という力を入れたスタッフワークで、初登場回や前回で小出しにしていた立神のプロフィールが明らかにされる。
奔放なロックシンガーのようにふるまってきた立神が、お嬢様らしい装いと態度を強要され、それはそれで似合っているのに、それでも反発をつづける面白味。いわば同シリーズ構成の『Go!プリンセスプリキュア』の生まれ育った立場よりも自分の目指す方向へ進むというメッセージを、構図を裏返して違う語り口で描いたわけだ。


執事として立神をつれさった青年も、予想外にキャラクターが掘りさげられていく。
もともと身寄りのないところを立神家にひきとられ、家族のように育ったというプロフィールは、物語が違えば主人公になってもおかしくない。通常は眼鏡に光が反射して心情が隠されているが、内心が漏れる場面だけ眼鏡が透けて表情がわかるという表現も、いかにもアニメならではの演出で良かった。
そしてパーティーで立神がロックをとおして自分を表現する場面で、物語がぐるりとひっくり返る。バンドの仲間や機材を屋敷に入れられた理由として、青年以外の執事やメイドが協力していたと説明される。ここで立神が自分の道を進みたいと思うドラマから、執事として家族と一線を引こうとこだわる青年のドラマへと、物語がダイナミックに変化した。
青年に重心が移りつつも立神のドラマは弱くならない。東映のTVアニメとしては珍しくバンド演奏をアニメーションで見せて、歌にのせて立神のメッセージを絵と音で力強く表現する。
かつ来客に好意的に受けいれられたロックでも、青年の心を完全に変えるにはいたらず、プリキュアの戦いの後でようやく認めさせる。きちんと作品フォーマットを物語におりこむことで、アクションアニメとしての見どころを確保しつつ、歌ひとつで心変わりするよりも葛藤を強めていた。