法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』○○なのに××SP

今回はギャップとコントラストがテーマ。
パレスチナの落書き騒動」は、バンクシー作品の社会派テーマはいっさい無視して、無価値に見える壁や扉のラクガキが高額でとりひきされることによる騒動をとりあげる。前提としての社会派テーマは作品を見るだけでわかるし、スタジオのゲストも理解していたが、そのテーマの高尚さと起きるトラブルのギャップに注目するつくりでも良かったのでは。とはいえ、アートの価値とは何だろうという問いかけとしても成立していて、これはこれで興味深かった。
「インドのライオン」は、インド西部グジャラート州シュナーガド村で、村人とライオンの奇妙な共存を描く。生息域を失い、人家に近づいて家畜を襲うようになったインドライオン。しかし鹿を食べることから、農作物の食害を防ぐ存在として歓迎され、村人の威嚇音で逃げ出した鹿を待ち伏せして食べることに。村人は神獣でもあるインドライオンを崇拝し、満腹のライオンはわざわざ人間を襲わない。太古における犬や猫の家畜化も、このような情景だったのだろうか。
「航空機事故の真相」は、1989年にブラジルで起きた航空機墜落事故をとりあげる。操縦士が知らない間にシステムが入れかえられて最初に方角の入力をミスして、ラジオの電波をたよりに街へ行こうとしたら内陸からの電波で、アマゾン川にそってくだるつもりが別の川をのぼる結果に。とはいえ最大の原因は空港にレーダーがないことなので、いつかは起きる事故だったろうな、という感想は今だからいえることか。
「マサイ族のクリケット」は、マサイ族の若者たちが伝統に異議をとなえるため、新しい文化をとりいれようとする姿を追う。南アフリカ共和国から呼んだコーチがユニフォームを忘れたため伝統衣装で競技をするが、その姿は実に楽しげ。世界大会にも招待され、イギリスの文化にふれながら、練習でできなかった試合形式にいきなりのぞむ。本選には進めなかったが、イギリスBチームに勝利するなど大健闘。そんな若者たちがやめさせたかった伝統は、女性が幼くして嫁入りさせられるという風習。長老たちは拒否していたが、若者たちの奮闘をつうじて、風習をやめることを認めるというハッピーエンド。それから増えたクリケットチームには、女子チームまでいるという。文化による侵略などの観点もほしいところだが、見ていて本当にすがすがしさを感じる内容だった。