法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ねほりんぱほりん』2次元しか本気で愛せない女たち

それぞれの世界の住人が顔出しで語りにくい内容を、音声を変換して動物人形劇の形式で見せるトーク番組。昨年7月にEテレで放映され、今期からレギュラー化した。
ねほりんぱほりん - NHK
今回はアニメキャラクターに恋をする女性たちが登場。
架空の人物への恋話を人形が展開するというメタなビジュアルが楽しい。たしかに三次元な君たちだけど、アニメよりよほど人間離れしているよね?という。


そして語られる内容はというと、アニメポスターを部屋全体にはったり、新番組1話をいったんすべてチェックしてからしぼりこんだり*1、イヤホンを鼻に刺して口からアニメの声を出すという技を披露したり、いかにもなアニメオタク像を見せていく。
アニメは裏切らない、あったとしても良い方向だけ、そんな価値観から現実の男性より好きなのだという。現実の男性に失望する理由で重いものは、結婚をもうしこんできた男に妻子がいたというひとりくらい。男子に毛が生えていたとか、にぎった手が湿っていたとか、初体験した後にトイレで排便する音を聞いたとか、生身の人間に要求するのは酷な理由ばかりが語られる。
しかし意外なことに、スタジオで主に語った女性は男性との経験がないわけではない。先に初体験の出来事が出てきたように、むしろ男性との経験は多い印象すらあった。TVアニメが放映されない時期には三次元の恋人をつくるので複数の経験があったり、三次元に生きるために結婚を予定していたり……現実で相手にされないから虚構に逃げたという固定観念をくつがえす状況が明かされていく。


ふりかえって考えると、紹介された部屋も、たしかにアニメグッズに満ちているが、きちんと整理されて清潔感もあった。
現実と虚構の両方を選べる立場の女性が、現実に生きる自覚と覚悟はもった上で、完璧な理想を求めてアニメに恋している。そんな情景に、まぶしさすら感じられた。

*1:時間がないから倍速で見るというところは、もうちょっと映像作品としてのアニメも愛してほしいと思ったが。