法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season15』第3話 人生のお会計

余命半年を宣告された保険の営業マン。飛びこんだ家の中で、首つり自殺をしている老人を助けた。老人は娘を殺された絶望を営業マンへと語った。
三週間後、老人が撲殺され、その保険金が営業マンへわたることになったという。営業マンにはアリバイがあったが、不思議な行動をはじめた……


既存のサスペンスで見てきたような情景が、少しずつずらされて提示されていく。櫻井智也という脚本家は初めて見たが、舞台で活躍しているらしい。

老人が撲殺されたこと以外は普通に復讐代行ストーリーだと見当がつくが、複数のトリックと行き違いがしかけられていて、サスペンス的な密度は充分。営業マンの気弱な性格と強気な行動のギャップも楽しい。
最後に崖に呼び出されるという、いかにも2時間ドラマ的なシチュエーションに、娘の自殺した場所という因縁をもたせた結末もおもしろい。そこが自殺の名所というさりげない伏線から、崖に呼び出したことに全く異なる意味まで付与される。完全犯罪のひとつの類型ではあるが、なるほど残された状況が計画通りであれば、現実の警察も意図通りに動いただろうと思わせる。
代行したつもりが老人の勝手な動きで奇妙な状況におちいる営業マンの姿で、復讐そのものではなく復讐に安易に共感することの愚かしさを描いた結末も胸に落ちた。


カメラワークも今回は手間がかかっていた。
特に良かったのはヤクザの事務所に乗りこんだ2回目で、妨害を無視して前進する営業マンを横位置から1カットでフォローした場面。映画『オールドボーイ』の1カットアクションを思い出させた。
他に、復讐対象の妻を喫茶店へ呼び出す罠も、呼び出した人間を映さない不安感と、映されなかった真実が明かされる場面の衝撃を、映像として表現できていた。