法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

接客を題材にした漫画『コンシェルジュ』の作者による、誤解しようのないオモテナシ

慰安婦像に対してCalcijp氏とdokuninjin_blue氏はニーメラーの詩を歌えるか - 法華狼の日記
上記エントリでニーメラー*1の詩を使ったところ、漫画家による改変ツイートをd.s氏に教示していただいた。

この藤栄道彦氏のツイートは、すでに多くの批判がよせられているように、あまりにも立場が転倒している。
ニーメラーの詩とは、最初は権力に同化して攻撃を歓迎していたら、その矛先が最後は自分に向かってきたという自省をこめた警句だ。
それを権力に同化するように改変してどうする。よもや、自分に矛先が向かうまで権力に同化する処世術でも推奨したいのか。


さらに藤栄道彦氏のツイッターを見ると、捏造にもとづく批判や脅迫によって「攻撃」され、大学を追われた人物に対して、どちらかといえば「攻撃」に加担していた。

同じ記事に対して、私は下記エントリでまとめたように、植村隆氏の説明に説得力を感じたし、産経側の不誠実さと不勉強さがあらわになったと解釈した。
植村隆インタビュー詳報において、産経側の主張が自壊していくまで - 法華狼の日記
私とは違う記事が見えているのかもしれない藤栄道彦氏は、植村隆氏が国外で仕事するようになった結果を歓迎するようなツイートまでしていた。

藤栄道彦氏は慰安婦像に対しても、当然のように政治的な圧力をかけて外国の表現を断念させることを肯定していた。

こうした政治的な攻撃が自分にふりかかってくる可能性を、藤栄道彦氏は想像すらしないのだろうか。


さて、藤栄道彦氏の漫画家としての代表作をひとつあげるなら、ホテル従業員を題材にした『コンシェルジュ』シリーズだろう*2
しかし、しばしば作者の政治性を稚拙に反映させた描写が批判されている。典型的な事例として、『コンシェルジュラチナム』第43話「人間として!」で描かれた外国人への対応がある*3

これはサッカー場で排外主義的な横断幕をかかげられた事件*4を使ったギャグだ。この描写をtt523ghj氏に批判された藤栄道彦氏は、怒りより笑いに力があるという釈明をした。

しかしここで登場人物が恐れたのは「誤解」だけ。翻訳すると性的対応を求めていたことがわかり、相手側が実際に悪かった描写として終わってしまった。
しかも藤栄道彦氏は、アメニティグッズの盗難を「特定の国」へむすびつける別の描写をdogu_fm氏に批判され、取材にもとづく「リアリティ」だと答えた。

しかし国籍を基準に「最初から宿泊をお断りするべき」と思ったのであれば排外主義そのものだし、それを現実で作者の実感として述べたならフィクションという責任回避も通用しない。
この態度は自作と関係ない出来事でも変わらない。最近も大阪で外国人観光客への差別的な対応*5が問題視された報道に対して、藤栄道彦氏は嘲笑するような態度すらとった。

そう、どこにも「誤解」などなかったのだ。

*1:ニーメラーとは - コトバンク

*2:いしぜきひでゆき氏が原作をつとめていたが、『コンシェルジュラチナム』から原案クレジットに変わっている。

*3:第9巻159頁。

*4:横断幕に気づいて抗議したサポーターによるブログエントリがこちら。サガン鳥栖戦における埼スタゴール裏ゲートでの人種差別的弾幕について。 - 想像力はベッドルームと路上から

*5:寿司屋がワサビを大盛りで混入させた事例は、私も少し調べたことがある。「市場ずし」がワサビを大量に入れて出した問題は、韓国人観光客への差別が目的ではない気はする - 法華狼の日記