法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『探検バクモン』手塚治虫 最後のアトリエ

特にイベントや記念日がからんでいるわけでもないはずだが、今回は手塚プロダクションに潜入。
探検バクモン - NHK
アシスタントをしていた三浦みつる氏が『火の鳥 望郷編』で担当した宇宙船を見たり、『ブラック・ジャック』でケヤキの木を観察するように手塚治虫に注意されて漫画の最初と最後で木肌の滑らかさが変わっていたり。
手塚治虫の生原稿をすべて保管している巨大金庫室や、最近になって初めて鍵をあけた引き出しの中身が紹介されたり。
ブラック・ジャック』連載1話の生原稿を裏から光に透かして見て、いったん描きあげた瞳を小さく修正したことを示したり。
他に、所属している若手アニメーターの机が映り、その原画らしいものが紹介されたりもした。
ただ、まとまった情報を映像として見る興味深さはあったし、手塚治虫の意思を残された原稿や遺品から読み解く作業は楽しかったが、特に目を引くほどの新情報はなかったかな……


しかし番組そのものではないが、NHKサイトに掲載された手塚るみ子氏のインタビューには、ひとつ得心がいく部分があった。
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手筭治虫をリアルタイムで知らない世代には、教科書に載っている歴史上の人物と捉えられてリアリティーがなくなり、作品が読まれなくなってしまうこともあります。最近は、手筭の作品を置いてくださっている図書館や学校もあるそうで大変ありがたいのですが、おそらく私たちが夏目漱石を読むような感覚で作品に触れているのではないかと思って……。

しかし懸命に生きて描いてきたからこそ、これだけ心を打つ作品に仕上がったということを、もっと知ってもらいたいですね。ですから、あまり「雲の上の人」にしたくないという気持ちがあり、「苦しんでいたときもあった」という“人間として”の手筭治虫の魅力も伝えたいです。

一方で、子どもたちに夢を与える作品もあり、そして大人になってもその夢を持ち続けているという世界観もあります。手筭治虫の人間臭さを見せつつも、皆さんが持ってくださっている憧れのイメージをむやみに崩さないよう、バランスに気をつけていますね。

ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』で、手塚治虫を演じていた漫画家の実態を描こうとしたり、さまざまなパロディやリメイクを許容したり。そうした公式の動きが、漫画の神を漫画家として地に下ろそうとするふるまいだという憶測が、こうして公式の発言として裏づけられた。