法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

福島原発における意識のゆるみを、竜田一人氏は知らなかったのか、知っていてごまかしたのか

福島原発の現場作業体験をルポ漫画化した竜田一人氏。2016年2月に、線量計がうるさいので現場では切っているというツイートをしていた。

これに対して、廃炉作業員らしき人物も現場作業で音を鳴らさないこともある、とツイートしていた。


こうしたツイートを私は下記エントリでまとめて、竜田一人氏自身の異なる見解や、線量計を切ることが法令違反とされた事例を紹介し、疑問をまとめた。
マンガ『いちえふ 〜福島第一原子力発電所労働記〜』の作者は、警報音を切っていたのか鳴らしていたのか - 法華狼の日記

同じ原発の仕事においても、高線量の場所では鳴らしていて、低線量の場所では音を切っていたということだろうか。それを判断する基準は誰が決めたのだろうか。

線量計の針を見ながら、きちんと作業ができるのか。警報音を切って作業することは、慢心につながらないのか。そんな疑問を竜田一人氏のツイートから感じるのだが……

ひとつの現場証言としては興味深いとも感じたが、さまざまな情報とてらしあわせて齟齬や不安を感じたのも正直な感想ではあった。


後日、音を切っていたとの現場証言はツイッターで強く批判されたらしく、竜田一人氏は釣りであったとツイートで表明した。

ところが2016年9月に入って、福島原発で法令違反があったことが報じられた。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160912/k10010682411000.html

外部からの侵入を検知する装置の警報音が鳴らないようにしていた法令違反があったとして、原子力規制委員会は、厳重注意とともに、再発防止の指示をしました。東京電力は人以外の動くものに反応するケースが相次いだため止めていたとして、再発防止を徹底するとしています。 調査に対し、東京電力は人以外の動くものに反応して作動するケースが相次いだため、現場の責任者や担当者の判断で止めたと説明したうえで、「日常的に鳴らないようにしていたとみられ、だんだんとセキュリティーの意識が緩んできた」と話したということです。

もちろん線量計と侵入検知の重要性が同等ということはないだろう。とはいえ、現場の慢心や弛緩を示す情報として通じることも間違いない。


気にかかるのは、このような現場の状況を竜田一人氏が知っているのか否かということ。
知っていて黙っているという可能性もないではない。しかし悪意や虚偽を見いだしたくはないので、批判されて後から釣りということにしたわけではないと仮定しよう。
いや、仮定するまでもなく、知らなかった可能性が高いとは思っている。継続的に情報を追っているといっても、あくまで現場はひとりの作業員として短期間に経験しただけで、さすがに全体像を見とおす立場ではないだろう。しかし経験に限界があるならば、そう自覚しながら情報を発信しなければなるまい。