法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』3センチのび太の大冒険

ジャイアンスネ夫が小川にいると、笹船に乗った小さなのび太が流れてきた。ドラえもんしずちゃんといっしょに小さくなって遊んでいるという。
しかしのび太下流へ流れてしまった。ドラえもんしずちゃんは急いで助けようとするが、ジャイアンスネ夫は自分たちも小さくなって冒険したいと主張して……


今回は30分枠いっぱい使ったアニメオリジナル中編。与口奈津江脚本、寺田和男コンテ、三宅綱太郎演出、嶋津郁雄作画監督という、SP回では珍しいスタッフ構成。
2008年の「そして、ボクらは旅に出た」以来、ミニサイズの冒険譚は定期的に作られてきたが、どれも見どころがあった。今回も期待にこたえる内容だ。
『ドラえもん』そして、ボクらは旅に出た - 法華狼の日記
まず、発端は原作短編の「のび太救出決死探検隊」に近い。どちらものび太の危機を序盤に配置してスピーディーに展開していくが、今回はジャイアンスネ夫の視点から導入して、より説明をショートカット。しかも、のび太と合流してからサイズを戻しに往復しなければならなくなり、移動距離を長くした。過去のミニサイズ冒険がせまい舞台でおこなわれてきたことと対照的で新鮮味がある。
今回は縮小してからの身体能力が全体として高く、試行錯誤して頭をつかう場面は少ないが、そのかわりに映像の見せ場は多い。小さい体で川から上がるために廃自転車をつかう動きや、カラスを追いはらう大量の空き缶、駄菓子屋の雑然とした暗がりなど、手堅いアニメーションと緻密な背景美術が楽しめた。


また、秘密道具の制限はほとんど最初から最後までかからないが、それゆえミニサイズになって高速移動する過去にない映像が楽しめた。今回のエピソードで登場した秘密道具が少しずつ使えなくなる過程もていねいに描かれている。特に、のび太の中盤の奮闘で結果的にビッグライトを失う展開が皮肉でいい。
そして序盤から登場人物の不安感をかきたてつづけたカラスで、最後に逆転の爽快感をつくりだす。きれいごとであっても、登場人物の行動として不自然ではなく、納得感が高い。襲われてきた立場でも、のび太なら傷ついた相手を助けようとするだろうし、そんなのび太ならジャイアンも助けようとするだろう。


物語の後には『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』のPVがTV初公開され、映画にあわせたテレビ朝日イベントを紹介。PVは映画公式サイトでも公開中。
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』公式サイト
情報は断片的にしかわからないが、どうやら来年の映画はスノーボールアース説をとりいれているらしい。だとすると南極は発端にすぎないのか、それとも地球が凍った時期に生まれた文明が南極でだけ残っていたという展開になるのか、どちらかな。