法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『奇跡体験!アンビリバボー』市民が窃盗団結成★FBIから極秘文書を盗み出せ

1971年、長くつづいたベトナム戦争が忌まわしく思われ始めていた米国。FBIの小さな事務所で、市民有志による窃盗事件が起きた。
それによりFBIのスキャンダルがあばかれ、米国政府をゆりうごかす大きな潮流を生みだした……


今回はFBIのフーバー長官が大規模な盗聴をおこなっていた問題と、それを窃盗に手を染めてまで探りあてた市民たちの軌跡を描く。
奇跡体験!アンビリバボー:市民が窃盗団結成★FBIから極秘文書を盗み出せ - フジテレビ

 ジョンさんは当時を振り返り、こう話してくれた。
「他国では自由を訴えながら、本国では自由を剥奪する、それがアメリカという国でした。私たちは運動の戦略を変える必要があったんです。」

デモという示威行為に限界を感じたジョンとボニーの夫妻に、同じように大学で講師をしていたビル・ダビドンが接触
反戦運動に対するFBIの弾圧に、不正な手段がつかわれていると考えて、その証拠を盗みだそうとする。
過激化して暴力をつかうかわりに、窃盗という犯罪を選んだのだ。


もちろんFBI本局は警備が厳しいはずなので、フィラディルフィア郊外の雑居ビルにあった支局へと潜入しようとする。
ボニーは女性としてFBIにつとめたいという意図を語って支局に入り、セキュリティ状態をチェック。重要書類が置いてあるらしいことも確認した。
そして、真下の部屋にいる管理人が気づかないよう、世紀の一戦の日に潜入することを決めた。

1971年3月8日…その日は、ボクシング界のスター、モハメド・アリが世界王者ジョー・フライヤーに挑戦、世紀の一戦と呼ばれる試合が行われる日。 誰もがTVの前に釘付けになるのは間違いなかった。 そこで…TV中継が始まる19時に作戦を決行することにした。

そう、もしモハメド・アリが徴兵忌避をおこなわなかったら、この潜入作戦はそのままでは成功しなかったのだ。
先日に亡くなられた時、あらためてベトナム戦争への反対が注目されたアリ。このようなかたちで関わっているとは知らなかった。


直前に9人集めたメンバーから1人が脱落したり、当日にドアの鍵が変更されていたりという障害もありつつ、使われていない古いドアから潜入するなどして対処。室内からドアをふさいだキャビネットを少しずつ動かすサスペンスを乗りこえて、潜入に成功する。
そして手当たり次第に持ってきた書類をアジトで精査すると、電話交換手に機密情報をもらさせたり、郵便仕分け人に手紙を開封させたりする指示書が発見された。
その書類をニューヨークタイムズロサンゼルスタイムズワシントンポストに送ったところ、動いたのはワシントンポストだけ。FBIに書類の確認をとったところ、本物だが報道するなという電話が長官じきじきにかかってきた。
そしてワシントンポストが一面に掲載する決断をした一方、ニューヨークタイムズロサンゼルスタイムズは送られてきた書類をFBIに提出。この2紙の限界を示すエピソードである。書類はコピーだったが、その機種がしぼりこまれたことでジョンのつとめていた大学に捜査の手がのびる。


最終的に、もりあがったスキャンダルを受けてNBCのリポーターが司法に書類開示を請求。

情報公開法に基づき、FBIが属する司法省に情報開示を求めた。 だが、数ヶ月かけて何度も請求したが、司法省は開示を拒否し続けた。
 そして、カールはついに裁判を起こした。 判事は、文書を見て司法省に情報開示を指示。

FBIは自らが敵視する思想を持つ人物や団体に対し、信用を失墜させるような活動を意図的に行っていた。 内部に危険分子がいると噂を流したり、恥になる情報を掴んで脅したり、それを20年以上に渡って続けていたというのだ。

隠しきれなくなったFBIは、事件の5年後に犯人捜しを断念。2014年1月にメンバーの正体を明かす書籍が出版されるまで、事件の真実は隠されたままだった。
書籍の著者は当時のワシントンポスト記者だが、正体を公開したのはビル・ダビドンが体調を崩したため。残念ながら出版前に亡くなったという。


番組は現在のメンバーや家族に取材し、彼らの誇りある犯罪をたたえた。
今回は、非合法な手段による反政府活動を、ゴールデン番組でもこのようにあつかえるのかという驚きがあった。
もちろん外国での出来事であることと、米国自身があやまちを認めた歴史という理由もあるだろうが。