法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』トリセツ・メーカー/ぞうきん探偵のび太

前半はアニメオリジナルで、『FLAG』の寺田和男監督がコンテとして初参加。後半は原作通りだが、捜査の過程を大きくふくらましている。
今回からOPが映画宣伝をやめたかと思ったら、途中でドラえもんのび太が放映されるエピソードの前説を始める。すでに『クレヨンしんちゃん』で始めている手法だが、本編にテロップを入れるよりは良いかな。


「トリセツ・メーカー」は、あらゆるものの取扱説明書をつくる秘密道具が登場。ジャイアンの暴力をやりすごそうとしたり、しずちゃんに気にいられようと活用するが……
脚本は与口奈津江。たぶん女性脚本家だろうに、女性のとりあつかいが難しいから頁数が分厚くなるという描写はどうなんだろう。むろん、脚本会議で脚本家以外が提案した可能性はあるし、コンテ段階の改変の可能性もないではないが。
だいたい物語の中でも、ジャイアンの暴力をやりすごそうとして必死で頁をめくる描写がある。まず、しずちゃんに出会って女性一般のとりあつかいが面倒と思ったら、それは個人差にすぎず、ジャイアンはもっと頁数が分厚かった……という展開にすれば、このような違和感はなかった。
ジャイアンの暴力をやりすごせないことを説明書がダメ押しするとか、しずちゃんに焼き芋をあげるために回りくどすぎる手法を使うとか、本筋は光っていただけに残念。ジャイアンの母親に止めてもらうというオチも、予想範囲内に見えて「製造元」にゆだねるという取扱説明書ならではの描写で良かったのだが。
寺田和男コンテは、意外と普段と変わりない印象。ただ、道の先で子供たちが逃げていく描写と、川沿いを歩く場面の密着マルチは目を引いた。


「ぞうきん探偵のび太」は、鏡面をふくことで光の反射が遅れて、過去の光景が見えてくる秘密道具が登場。それでジャイアンが植えた花の芽をふんだ犯人を見つけようとするが……
原作では秘密道具の活用の一例として犯人を捜すが、今回のアニメ化では犯人捜しを後半のメインにもってくる。そのために自動車が鏡面をふさぐという描写を入れて、ウインドウに映っていただろう光景を探すため自動車を追いかけていく。
真犯人を隠すため、犯行の瞬間と犯人捜しの場面とで同じ場面を違う角度から描くという、アニメとして手間のかかることをやっている。私は原作既読なので手間のかけように感心するだけだったが、さて今回が初見の視聴者はどう思っただろうか。
ただ、アニメならではの新鮮味は少なかったかな。原作は展開が無駄なく、相互の描写が関連している。そこで今回のアレンジは後半を大きくふくらませているだけで、構造は変えていない。