法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダムUC RE:0096』第1話 96年目の出発

サブタイトルは「出発」と書いて「たびだち」と読ませる。
初回はユニコーンに主人公が乗って起動する場面をアバンタイトルに持ってきただけで、OVA第1巻の前半とほとんど同じ。時間配分がしっかりしているので、ちゃんと少年と少女が出会う場面を結末に配置できていたが、そこからEDへ入ったのが唐突ではあった。TV版では独自にBGMを足して、第1話のクライマックスらしくもりあげても良かったのでは。
新規OPEDにも独自のアニメーションは少なく、止め絵や使いまわし作画に加工をほどこしたもの。ところどころの作画を新規にさしかえているが*1、あくまで現状は再編集版でしかない。おそれていたよりテロップが子供向け枠らしく目立っていて、映像への没入をさまたげる。TV版の売りの副音声は聞いていないのでわからない。
当然のように最終回まで見るが、特に引っかかったことがなければ感想エントリを上げることはないだろう。


ただ映像のつくりとしては、やはり素晴らしいものがあった。とにかく場面ごとの無重量状態をコンテ段階から入念に表現しようとして、きちんと作画でこたえている。カメラが上下左右に回転しつづけ、しかし位置関係は明瞭。
特に通路の空間を無駄なく移動する場面で、上下左右の移動装置にそれぞれ人間がつかまっている場面が地味にいい。いったん廊下のように映して無重量状態らしい印象を生んでから、カメラを垂直に変えてエレベーターのように見せて映像に安定感をもたらして会話へと注意を向けやすくする。


あと、直前まで放映していたシリーズ最新作『鉄血のオルフェンズ』と比べて、記憶よりメカ作画の線が少ないことが、逆に良かった。
複雑なのはメカの立体構成であり、無駄な模様や分割線はない。アニメらしいデフォルメされた影ではなく、あくまで立体感を表現するためのシンプルな影をつけている。作画の動きで巨大メカを表現するのだ、というデザインレベルの意思が感じられた。
名も無きキャラクターの奮戦を魅力的に描き、その戦死をあくまで脇役としてあっさり流すことで、あくまで主人公側がそうだっただけの『鉄血のオルフェンズ』よりドライな戦場を描けていたようにも思う。それが巻を重ねるにつれて崩れていくことは知っているものの、名も顔も無いキャラクターの奮戦は最後まで印象的に描写されていた。