発端は、朝日新聞による小倉紀蔵教授インタビュー。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12210322.html
インタビューを引用したtakapapa_bey氏の上記ツイートに対して、nerinanarineyo氏が下記のように問いただした。
ここに口をはさんできたのがYuriy_Julius氏。
インタビュー記事にも出てこない吉見教授や林教授が「20万人強制連行」や「奴隷狩り」を主張しているかのようにツイートした。
しかし両教授とも「奴隷狩り」にあたるような事例があったことは指摘しているが、「20万人強制連行」と呼ぶべき主張はしていない。
かねてから吉見教授は20万人を上限に近い推計数のひとつとしていて絶対視はしていないし、地域や時期によって多様な募集方法があったと主張してきた*1。
当然、nerinanarineyo氏は問いただした。20万人すべてが強制連行されたという単純な主張を、吉見教授らがしているかどうか。
するとYuriy_Julius氏は、推計数の上限が20万人であることをもって「普通に20万人強制連行説」と主張した*2。
しかし推計で8万人から20万人という幅を示しているのに、「20万人強制連行」が「独り歩き」するなどという解釈がなりたつだろうか。小倉教授インタビューの文脈を忘れているのはYuriy_Julius氏ではないか。
しかも引用されているのは吉見教授自身の文章ではなく、かつて韓国政府サイトの資料館で紹介された一説だ*3。韓国政府の認識として引用するならわかるが、吉見教授の主張として引用するのは不適当だろう。
さらにtakapapa_bey氏は、全員が強制連行されたという主張でなくても「20万人強制連行説」だと主張した。
しかし、後にtakapapa_bey氏は、慰安所の一部の悲惨さをもって全体を論じるべきではないという。ならば一部で強制連行を主張した吉見教授や林教授を20万人強制連行論者と呼ぶべきではあるまい。
ついでにtakapapa_bey氏は2015年7月、植村隆元記者の義母が挺対協を支援していたとか*4、詐欺容疑で逮捕された*5などと主張。
このツイートのソースをmoriMZ氏に求められ、takapapa_bey氏はブログ記事を提示していた。
しかしブログ記事にあるのも挺対協の抑圧らしき証言だけで、元記者の義母にまつわる話はかかれていない。
しかもtakapapa_bey氏本人は、最近は「本を読めとか、このブログを見ろとか禁止」と主張している。
詳細は明らかにしていないものの、Yuriy_Julius氏とtakapapa_bey氏はドイツ史などの歴史研究者らしい。それで両氏とも吉見教授らを「史料の扱い方は甚だ疑問」「史料の雑な扱いはあって」などと主張する。
その自信ありげな口調と、たまに史料を提示する態度で信用する人も多いようだ。しかしツイッター上でのふるまいを見るかぎり、両氏とも専門家らしい知見はもちろん、まともな日本語読解力をそなえているかも疑わしい。
本当に歴史研究者なのであれば、その能力がツイッターにおいて全く発揮できていないことを残念に思う。
*2:ただYuriy_Julius氏が指摘しているとおり、nerinanarineyo氏が朝鮮半島という限定をくわえたのは勇み足だろう。
*3:http://d.hatena.ne.jp/MARC73/20130506/137061564に英語版が転載されており、該当する文章も読める。なお、韓国政府が吉見義明説の下限を8万人説にしているのは、あくまで紹介しただけの千田夏光説を下限ととりちがえたのではないかと思われる。『従軍慰安婦』でも自身の推計としては下限5万人を算出しており、その数字は近年の『日本軍「慰安婦」制度とは何か』でも変わらない。
*4:実際は対立していた別団体。従軍慰安婦問題を否定するために認知がゆがみきった元朝日記者の前川惠司氏 - 法華狼の日記
*5:逮捕されたのは事実だが、2014年に無罪が確定している。その判決報道からしても、どちらかといえば名前を利用された被害者であったし、詐欺にならないよう義母自身は努力していたようだ。詐欺容疑で裁判にかけられていた遺族会会長が無罪確定 - 法華狼の日記