法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ゴジラ FINAL WARS』

地球防衛軍の活躍により、多くの怪獣は眠りについた。ゴジラもまた轟天号との戦いで南極の氷に埋もれていった。
しかし20年後、さまざまな異変とともに怪獣が活発化する。ふたたび危機におちいった人類に、X星人が手をさしのべたが……


北村龍平監督をむかえて2004年に公開された、現時点で邦画で制作されたゴジラの最新作。BGMを担当したキース・エマーソンが亡くなられたので、現在では忘れられてそう*1なこの作品の感想を書いておく。

まず、単なるゴジラシリーズの集大成というより、東宝特撮の集大成というべき作品。『地球防衛軍』といった名称だけでなく、X星人がつたえる新たな危機は『妖星ゴラス』だし、ミュータントも『ノストラダムスの大予言』から引いたものだろう。
もちろん過去のゴジラシリーズを思わせる描写も多い。怪獣を多く出しながら人間と宇宙人のバトルが主軸なところや、世界各地の名所旧跡を怪獣が襲う観光性など、良くも悪くも過去作品と変わらない。この作品を批判する場合、その多くが過去作品にもつきささってしまうだろう。


作品そのものは、全体として狂騒的で起伏に欠けるが、まんべんなくアクションが散りばめられている。重いテーマを半端に語ってストーリーが停滞することはない。ほしい説明がさくさく入り、最低限の状況を理解させて、すぐアクションにつなぐという割りきりが好ましい。老若男女がバランスよく活躍しているのも、邦画アクションらしからぬ良さだった。
X星人の暗躍はあからさまだが、X星人内の対立を利用することで、ツッコミどころが意外とない。過去シリーズに比べれば頭がいい設定の敵は慎重に動いているし、観客が予想できる陰謀は早々にあばいて長引かせない。
それでもバイクチェイスが無駄に長かったり、合流するまでのミニラのドラマがつまらなかったり、整理すべきところは多々あるとしても、期待以上に楽しめたのは事実。2時間超というシリーズ最長の尺も気にならない。


特撮のクオリティもそこそこ高くて、軽快に動きまわる怪獣をそこそこ説得力をもって描けていた。
世界中の都市で戦うこともあって、あまりミニチュアの数は多くないが、適度に合成を組みあわせることで、戦う舞台がせまいとは感じさせない。CG特撮も健闘していて、物語における位置づけが鼻につくところはあれど、1998年版のハリウッドゴジラを意識した怪獣ジラは現在でも通用しそうなクオリティ。
特撮がしっかりしているから、過去作品にない怪獣表現も素直に楽しめる。等身大のミュータントと戦うエビラや、高速前転で突撃するアンギラス、ビルごと押しきられるヘドラは印象に残った。キングシーサーがサッカーのように攻撃するアクションも、そのような動きができるという段取りをしっかり入れていて、見れば納得はできた。
ただ、最終決戦にもう一押しほしかったというか、モンスターXが予想の範囲内にとどまったことは残念。いっそジェットジャガーX星人がつかうくらいのサプライズはほしかったかな。

*1:しかし検索すると、追悼のさいに言及している人が複数いた。