高校生未来会議をとりあげた東京新聞の記事を、日本報道検証機構の楊井人文代表が批判していた。誤報があれば何らかの訂正は必要なところだろう。
「高校生未来会議は首相シンパが支援」 東京新聞報道に学生「傷つけられた」(下)(楊井人文) - 個人 - Yahoo!ニュース*1
そのなかで、高校生未来会議側として取材を受けた代表が、実際は語っていないコメントを記事にされたとあった。
「政治に興味がある地方の子が、東京のイベントに参加できないのを悔しく感じていた。斎木さんは首相の遠い親戚らしいが、各党の議員を招くので右翼、左翼関係なく来てほしい。シールズの高校生組織の『ティーンズソウル』の人もぜひ。デモはもう時代に合わないと思う」
出典:東京新聞2016年2月10日付朝刊特報面
石塚さんは「デモはもう時代に合わないと思う」という発言は一切していないとツイッターで指摘。しかし、ネット上では「世界でもデモは民主的活動の基本だけどね。がんばって勉強してほしいね」「こんな国際感覚じゃ恥ずかしい」などと、この引用をもとに批判が相次いでいる。
日本報道検証機構の取材に対しては、下記のように答えたという。
「デモも政治を変える大事な手段の一つ」と肯定したうえで「『高校生未来会議が選択したのは熟議という手段。手段は違っても政治をよくしていきたいという思いは一緒だと思う』と答えた」と説明。
そこで実際の行動を見ると、あまり「熟議」という気はしない。ただ私自身が高校生だった時のことを思うと、行動しているだけで立派と思うべきかもしれない。
女子高校生だけで社会への提言 - 「みらいぶ」高校生サイト
テレビを見ながら女性の描き方などに問題があると思ったらつぶやけるtwitterを作って、拡散、同時に意見の集計もして、という案を作り、その場でアカウントを取ってしまうというスピーディな行動をしていました。
「女子高校生が考える新しい家族法」チームは、家族の在り方として「一夫多妻制」という、大胆な案を提唱。働く女性にとっては家事のシェアもできるし、また子育てなどの悩みも相談し合えるという理由によるものでした。
さらにデモへ言及した代表のツイートを読んでいったところ、日本報道検証機構のつたえるニュアンスとも、また少し違ったデモ観を持っているように感じた*2。
「大衆を迎合的に動員するのには役立ちます」という表現をつかっているところからして首をかしげるし、「更に建設的に」ということは自身の活動よりデモが非建設的だという意味をもつ。
さらにyosuyosur氏の批判*3へ反論した連続ツイートを見ても、さほどデモという手段に価値を認めているようには読めない。
「意思がないのにも関わらず流行りだから参加し、それが意思のある人としてカウントされてる」「デモに参加する人での合意は仮初めの視野の狭い合意かと思います」といった主張は、東京新聞に掲載された「もう時代に合わない」より強い言葉だ。
「デモ参加者が必ずしも同じ意思を持っているとは限らず事実安保闘争の際も多くの人が何食わぬ顔で就職していました」という論理のつながりもよくわからない。安保に反対することと就職することがどのように矛盾するのだろう。よもやデモに参加したことを知られると就職できないという社会を追認していないだろうか。そもそも安保闘争は学生や労働者など広範な階層から参加したものだし、学生運動と混同しているような気もする。
ただ、おそらくハーバードならぬスタンフォードのジェイムズ・フィシュキン教授から「熟議」や「合意」というワードを引いて、その提言を実践したいのだろうことはわかった。
- 作者: ジェイムズ・S.フィシュキン,曽根泰教,James S. Fishkin,岩木貴子
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その実践を目指すならそれでいいとは思うが、そのために他の手段を劣っているように評する必要はない。