法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season14』第16話 右京の同級生

うずくまっている青年マリオを見かけた杉下は、近くの個人病院までつきそう。そこで右京は中学校で同級生だった小峰律子と再会した。
一方、入国管理局の情報漏洩を調査していた冠城は、先輩官僚の野坂にさぐりを入れていた。実直な野坂は、悪事をはたらくようには見えなかった。
そして数日後、外国人労働者の派遣業者が死体となって、路地で発見される……


山本むつみ脚本。杉下と冠城それぞれが対となる過去と再会して、社会的な問題に直面する。
まず感心したのが、外国人労働問題を正面からドラマ化できていること。このドラマでおなじみとなった架空国家エルドビアからの労働者をとおして、期待よりも低い賃金により借金が返せないまま厳しい労働条件をしいられている苦しみや、公的機関に助けを求めることができない立場の弱さを描いていく。
また、こういう導入ならば同級生が真犯人とあからさまになりそうなところ、ゲストキャラクターを分散して先読みを難しくしていたのも良かった*1。かつて正義感ゆえに孤立した小峰だけでなく、危ない橋をわたりながら派遣業者の悪事をさぐっていた野坂も、杉下の鏡像といえるキャラクターだ。それゆえゲスト個人のドラマで終わらず、杉下と冠城のドラマとして返ってくる。
だから事件の真相にはたどりつくものの、杉下と冠城は巨悪をとりのがしてしまう。もっと踏みこんでほしかったが、弱者にばかり強くあたる入国管理の問題もつたわってくる。斬新な視点はないものの、社会派ドラマとしてのオーソドックスな良さがあった。

*1:南米らしく麻薬密輸がからんでくるのも、どのような犯罪がおこなわれたかの全体像をおおいかくす。