法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ドラドラ源平合戦〜しずかちゃん御前を救え!〜

しずちゃん出木杉義経伝説を語り聞かせていた。のび太はそれが面白くなく、しずちゃん出木杉をひきはなす。
しずちゃんをつれて帰ったのび太だが、部屋では秘密道具「ウマタケ」が暴れており、まわりを巻きこんでタイムマシンにとびこんでしまった。


アニメオリジナルの30分SP。そーとめこういちろうコンテは2011年以来。田中薫作画監督ということもあり、さすがに作画演出は良かった。前半のウマタケが暴れまわるあたりは出色だし、後半の平安時代の武者姿もていねいにアニメナイズされている。
それで物語がおもしろければ最高なのだが、源義経をただのヘタレなギャグキャラにしているだけで、歴史というより伝説の表層をなでるようなつくり。プライドの高いだけの小物として義経をえがくまでは、うまく史実にちかいイメージをつくっていたが、義経側の成長や挫折にむすびつかないからドラマにならない。
そもそも、伝説と実像が異なることはタイムスリップSFの王道だが、のび太が伝説に思いいれを持っていないため、そのギャップが物語を動かさないのだ。弁慶の泣き所のような故事成語ネタも主人公が注目しないから、あっさり流されてしまう。


それで未来からの介入で虚構としか思えない伝説が実際に起きるというパターンかと思いきや、そうもならない。のび太たちが天狗にかんちがいされる描写くらいはあると思ったのだが。
史実との関連は、しずちゃんを助けるためウマタケが暴走し、それが鵯越の逆落としの呼び水になったというだけ。30分つかって史実にからんだ描写がそれだけというのは、あまりにさびしい。アニメにつかえそうな義経伝説は他にいくらでもあるだろう。
合戦図の片隅にウマタケが龍のように描き残された結末も、実際にそのような絵があるなら面白いが、そうでないならオチとしては弱い。その合戦図そのものはよく描けていて、絵としては印象的なのだが。