法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第8話 寄り添うかたち

鉄華団の心意気は評価したタービンズ。なんとか交渉も成立して、数日かけて距離をちぢめていく。


アバンタイトルで約5分かけて、タービンズ艦内の白兵戦を見せていく*1。前回はタービンズ視点でサプライズを重視して、今回は鉄華団視点で攻略のむずかしさを描写。シミュレーション戦闘やガンダムの破損描写でモビルスーツの出番も多い。物語上の新たな戦いはないが、戦闘ロボットアニメを見たという満足感がしっかりあった。
しかし宇宙空間らしい描写は多いが、未来世界らしさはない。ハーレムになっているタービンズ艦にイスラムっぽさを感じていたら、次回予告は日本の古式ゆかしいヤクザの姿。300年前の大戦争で文明が停滞したとか後退したとかいう設定はあるのだろうが、現代とは異なる社会観をアクセントとして入れてほしい気持ちはある。鉄華団が男ばかりと知ってヘテロセクシャリズムな反応をするタービンズ側に対して、それを時代錯誤な感覚と笑いとばすキャラクターを出すとか。
現代と感覚が変わらないと思えば、キャラクタードラマとしては悪くない描写も多かったが。対等にあつかってほしいのに子供あつかいされ、それゆえ助けてもらえたオルガの鬱屈などは印象的だった。


あと、クーデリアが火星独立運動をまとめた過去が語られかけたかと思ったら、クーデリア自身が何らかの「資産」として交渉材料になるという話が出てくる。第1話のころは当面の目標と感じた火星独立運動だが、現在までのところ主人公陣営がクーデリアを護送するきっかけにしかなっておらず、マクガフィンとしてすら機能していない。
いずれ鉄華団が守ろうとする家族像が火星全体まで拡大するのかもしれないが、そうなる前に新たな護送動機がにおわされてしまった。こうするなら、最初からクーデリア自身にも謎な「資産」として護送される発端で良かった気がする。その「資産」の謎が物語への興味を引くだろうし、クーデリアの知見がせまいことの説明もつく。
雑誌『ガンダムエース』のプロデューサーインタビューを読むと、この作品は5年ほど前から動いていたという。少なくとも情報公開されるずっと前から長井監督と物語をつくっていて、途中で少し方向性が変わったらしい。火星独立運動がほとんど物語で意味をなさず、クーデリアのキャラクターに齟齬が感じられるのは、制作に時間をかけすぎて当初の設定と物語の展開が乖離してしまったためかもしれない。

*1:第6話の感想で望んだことが、さっそくかなえられた。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』#6 彼等について - 法華狼の日記