法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『言の葉の庭』

新海誠監督による、2013年に公開された46分の中編アニメ。雨降る公園の一角で出会いをかさねる女性と青年、その短い時間を切りとる。
言の葉の庭
今回も最後まで閉じた世界の物語だが、中心となる舞台からして意図的にせまく切りとっているとわかる。そして公園での幻想的な出会いが、外の世界で意外な連結をすることが物語のポイントとなっている。
大仰な時間と空間を舞台にした過去作品とちがって、うまく作家として視界をコントロールできていると感じた*1


キャラクタードラマとしても、同じように現代日本を舞台とした中編『秒速5センチメートル』より、ずっと見やすかった。キャラクターとの距離感が大人と子供とでアンバランスだった長編『星を追う子ども*2と比べて、ぐっと適切になっている。
傷ついた大人の女性と、まっすぐでも心の幼い学生という構図が良かったのだろう。どちらも現在の新海監督から遠いキャラクターだろうし、たぶん同じくらい近い。じわじわ広がる亀裂が衝突にいたった時、どちらにも共感しやすいし、共感しすぎて一方に嫌悪感をいだくこともない。だから過去作品よりも面倒な湿っぽさが少なくて、不器用な恋愛が描かれても気軽に見ていられる。


ちなみにGYAO!で10/9〜10/15と、10/30〜11/5の2度にわたって初配信。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00085/v06504/

*1:SFらしいワンアイデアを活用した短編『ほしのこえ』は良かったが、ロボットアニメ要素は求められた娯楽性をサービスで入れた感が強かった。

*2:感想はこちら。『星を追う子ども』 - 法華狼の日記