法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

手塚治虫が描いてないジャンルはグルメだけかもしれない

よくスポーツ漫画を描いていないといわれるが、『ブラック・ジャック』内でスポーツを題材にしたエピソードが複数ある。
スポーツに重要なリハビリを題材にしたり、心身のこんくらべに注目したり。その延長で、そろばん競技を題材にした珍しい漫画まである。


実際の手塚治虫は必ずしも先駆者ではなく、けっこうヒット作品の後追いが多い。しかし、だからこそ嫉妬にまみれた神として同時代に勃興したジャンルには必ずといっていいほど手をつけている。
だが、なぜかグルメを題材にした漫画だけは思い浮かばない。1989年に没するよりも前、1970年代に『包丁人味平』という長期ヒット作品が生まれ、1980年代には現在までつづく長期シリーズがいくつも生まれていたというのに。
もちろん手塚作品でも何かを美味しそうに食べる場面はいくつかあるが、手軽で素朴なインスタント系か、豪華なごちそうという記号か、飢えを満たす状況ばかりで、見事な調理の腕を見せる場面は思いつかない。


しかし思えば、あれだけ綺羅星のような漫画家がつどっていたトキワ荘でも、てぎわいい調理シーンや珍しい料理を描いた作家は趣味人の藤子不二雄Aくらいだろうか。
思えば1970年代から1980年代にかけて発表された『まんが道』は、寺田ヒロオによる調理シーンなどが素朴ゆえに『花のズボラ飯』のような日常グルメ漫画を先取りしたかのような感すらある。