法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『血界戦線』#終 Hello,world!

絶望王のたくらみにより、都市は霧におおわれ、結界が崩れつつあった。しかし秘密結社ライブラは「手始めに世界を救う」ことをあきらめたりはしない。
そしてふたたび大崩落しようとする紐育を、少年レオナルドが走りつづける。マクベス姉弟と絶望王に会って、この世界で生きつづけるために……


6月に第11話が放映されてから、ちょうど1クール分たって放映および配信*1された最終回。コンテ演出は松本理恵監督で、演出協力が4人ほど。
TVアニメ「血界戦線 & BEYOND」公式サイト
通常の2倍にふくらんだ46分の尺をつかって、戦いつづける大人と少年の姿を、最高のアニメーションで描いてくれた。
プロットだけをとりだすと、目的地へレオナルドが走って、それを仲間が支えるだけの単純な構造。そのまま30分枠におさめられそうな内容だが、そうすると物語に追いつくのが大変になったろう。同じく主人公視点で描かれた第1話で感じてしまったように*2
映像の緩急という意味では、過不足なく時間をつかいきっている。特にクライマックスは、クラウスの高速戦闘と、レオナルドの到達と、OP主題歌が重なり、会話劇の力強さを見事に映えさせていた。


テーマとしては、いつものボンズ制作アニメらしさが良い意味で感じられた。共同体の不足を直視しつつ、その内で生きる人を尊重し、その外にある人へ敬意をはらう。
冷笑主義におちいることなく、愛郷心で動員することもない。パロディではない熱いヒーローを描きながら、その行動が個人の抑圧にならないよう慎重に位置づけている。
見ていて娯楽として心地よかったし、寓話として適度な居心地のわるさがあった。


ただし前回から時間がたちすぎ、さすがに緊張感がとぎれたことは否めない。良くも悪くも2倍の尺があってこそ、視聴しながら気分がもりあがった。
総集編にあたる第10.5話は、それ自体はおもしろい内容ではあったが、それがなければ放送枠に最終回までおさまったという惜しさは感じた。ほぼ全話のコンテに監督がかかわるほどのこだわりは良いのだが、やはりいろいろ無理があったのだろう。