アニメオリジナルの前半と、原作を映像面でアレンジした後半と。
「ジャイアンの恩返し」は、受けた恩を自身の気のすむまで返したくなる秘密道具「ツルの恩返しキャップ」が登場。
なかなかジャイアンが恩を感じないかと思ったら、いざ恩を感じると果てしなくおせっかいな恩を返してくる。しかし最終的には体をはって助け、しかしまた……という構成はよくできていた。
あらゆる動物に恩返ししてもらえる原作「動物変身恩返しグスリ」*1を、人間でアレンジしたといったところか。良くも悪くも原作後期のようなシンプルでパターン化された筋立てで、まあまあ違和感なく楽しむことができた。
「南の島を組み立てよう」は、撮影したものをなんでもプラモにできる秘密道具「プラモ化カメラ」が登場。
スネ夫の自慢話にはりあって、豪華客船のラジコンどころか、島まるごとをプラモで再現。きちんと宿題も終わらせて、力いっぱいバカンスしようとする。原作でも珍しい、のび太が最後まで助けられて失敗しないエピソード。
今回のアニメ化では原作よりプラモらしさを強調しているのが特徴。しずちゃんのプラモも、ちゃんと二足歩行してダンスする原作とちがって、造形から動力のしくみまでオモチャ然としている。のび太プラモの泳ぐ動きなど、なかなかオモチャらしいアニメートが見事だったが、それは作り物っぽさを強調しているということでもあり、のび太は心から楽しめない。ジャイアンとスネ夫が乗りこんでくる経緯も、手漕ぎボートをつかった原作と違って、プラモ島が流されて地続きになったため。
結末もプラモより本物がいいという方向に誘導しているので、かなり後味が原作と異なる。これはこれで秘密道具の特性をビジュアルからストーリーまで反映させたアレンジとして完成度は高いのだが。
堀江佑は作画監督としては初参加だが、過去の作画スタッフでも名前を見る。シンエイ動画とつながりが深いアニメーターらしく、『怪盗ジョーカー』で何度か作画監督をしていた。ちょっと描線の太さ、絵柄の濃さが『怪盗ジョーカー』っぽい。
*1:アニメ化の感想はこちら。『ドラえもん』動物変身恩返しグスリ/雪だるまが町にやってきた - 法華狼の日記