今回のクライマックスはアクション作画がなかなか良かった。いかにも背景動画らしい精緻な背景動画を楽しめたのは、近年では珍しい。精緻なだけの背景動画は3DCGで表現することが多くなった。
鹿間貴裕や東出太や舘直樹や中澤勇一や津熊健徳など、この作品で最高の原画陣をそろえているだけあって、クライマックス以外も見どころが多かった。
おそらく原作と同じ展開ではあるだろうが、「最強の戦い」といえるだけの策の読みあいもできている。
敵勢力が「国宝」としてあつかっているほどの超兵器を、使い手のヴィザの失策ではなく*1、遊真のオンリーワンな特異性で突破する。
また、基地周辺で戦っている修が、遊真の突破の応用で攻撃を切りぬけたのもうまい。戦闘時にトリオン体という仮想の肉体で戦い、本来の肉体を隠しているという根幹設定が、ただ戦死や流血をおさえるエクスキューズに終わらず、登場人物の作戦として応用されている。
序盤も主人公の性格が好ましくはあったが、その時からは予想もつかないほど群像劇として楽しくなった。具体的には1クールの終わりごろ、ダブル主人公の修と遊真の処遇をめぐって、防衛組織内の対立が描かれたころから。
おそらくTVアニメ化される時にテンポがぬるくなっていそうだが*2、それゆえ複雑な状況がわかりやすいし、くりかえされる説明も設定を理解するために必要なものだろう。
戦争のルールを細かく詰めていきながら、さまざまな思惑がからみあって意外な展開を見せていく。たとえば撤退命令に弱い者がしたがったことが、そう命令した強者が撤退をしぶった時に言及されたりと、こまやかに過去の描写が反映され、能力の強弱とは異なる評価がきちんと描かれる。序盤の修の主人公らしい行動が、現在の敵が進めている「雛鳥」の捕獲作戦の背景になっているという、皮肉めいた展開も面白い。
今のところ、『NARUTO』や『BLEACH』もおこなおうとしていた集団戦闘を、ずっとうまく描写できている。主人公に活躍をかたよらせず、敵対関係を固定せず、流動的な戦場をつくりだせているからだ。かわりに個々のキャラクターは薄いが、ちゃんと戦闘や議論をとおして人格を描いており、見つづけていくと問題は感じない。