法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『血界戦線』#03 世界と世界のゲーム

人間をゾンビ化させる麻薬の情報を追ったクラウスは、異界の顔役ドン・アルルエルに会いに行った。チェスを発展させたボードゲーム「プロスフェアー」で戦い、一定時間内にアルルエルが勝てなければ願いを聞いてくれるからだ。


コンテは松本理恵監督と平川哲生の連名。
まったく架空のゲームで、緻密なルールを説明する余裕もないのに、迫真の勝負を描写することは難しい。いきおい、ゲームそのものとは違う次元で凄さを描くことになる。
この作品の「プロスフェアー」は、ゲームが進むにつれて盤面が増え、駒が変化したり新しい駒が登場するビジュアルで複雑さを表現。いうならばトレーディングカードゲームを完全情報ゲーム化したようなものとして描く。
駆け引きにおいては、先に人間で最強のチャンピオンを登場させてアルルエルに勝とうとして失敗した姿を見せる。それまで4回も勝負から生還したクラウスは、勝つために戦ったのではなく、時間制限内に逃げきるという勝負をしていたのだ。


そしてドラマとして最後の一押しで、クラウスが救おうとした人物はクラウスを殺そうとしていたことをアルルエルに告げられ、しかしクラウスは自分の信念を曲げず救いきる。実に「やりたいこととやるべきことが一致」している主人公で良い。
同原作者の『トライガン』の主人公が信念をもって見えたのは、あくまで悔恨ゆえという背景が用意されていたが*1、どちらかといえば背景を持たない信念が主人公としては好ましく感じる。作品全体としては、きちんと背景が用意されていると納得しやすくはあるので、どちらが作品として良いという話ではないが。

*1:TVアニメ版を視聴したのみで、原作は未読。