法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Go!プリンセスプリキュア』第9話 幕よあがれ!憧れのノーブルパーティ!

完成したドレスを着こんで、生徒会主催のパーティーに出席した春野。ダンスの予定に胸をときめかせつつも、美味しそうな料理に目うつりしたり、海藤会長の仕事ぶりに目をうばわれたり。
その時、敵幹部クローズの作戦で、会場が停電になってしまう。原因をさぐるため生徒会は倉庫へ向かう。仲間には強気を装う海藤だが、実は……


脚本は田中仁シリーズ構成。TVアニメで全話脚本をひとりが手がけることが少なくない昨今だが、さすがに4クール作品でこの登板率は珍しい。シリーズ構成が登板しているだけあって、連続エピソードとして集大成になっていた。
まず会場では、過去回で敵に利用されたゲストキャラクターが総出演。学校行事のパーティーという状況を活用し、プリキュアに助けられてからの現状を見せていった。
プリキュアのドラマとしては、モデルとプリキュアを両立することを決めた第5話の天ノ川にはじまり*1、やつれながらもドレス作成と学業を達成した第8話の春野につづき*2、複数の課題を同時に解かなければならない海藤が描かれた。
いわば第4話までは3人がプリキュアに変身できるまでの物語であり、第5話から今回まではプリキュアでありつづけるようになる物語ということ。キュアトゥインクル変身回が第4話から第5話にまたがっていたため気づかなかった。
葛藤に対する3人の結論も面白い。ひとりで実力以上の結果を出せる天ノ川は、良くも悪くも引っかかりない。無茶しながらも前向きに達成した春野は、個別では面白いが連続劇としては微妙。完璧に見えながら仲間に支えられた海藤は、個別では微妙だが連続劇として面白い。
第8話で春野が両立した時は、第5話との違いが少なくて工夫がないと感じた。しかし今回をあわせてみると、両立する結末はそろえた上で、3人の微妙な個性を描こうとしたのだろう。第8話の印象が好転するまではいかなかったが、連続エピソードとしては納得できた。


個別エピソードとして感想をいうと、完璧超人がオバケだけは苦手という設定はベタだが、その背景と展開がいい。
まず海藤の友人を原因にもってくることで、短時間で海藤の人間関係や過去の性格を描写。さらに倉庫に向かう時のやりとりも合わせて、生徒会役員のキャラクターをわかりやすく見せていく。
倉庫での海藤は、稚拙なオバケに怖がりつつも、敵に利用された生徒を助けるためプリキュアとして立ちあがる。それでも心が折れていったところ、春野が「ナイト」として救いだす。先に会場で海藤に春野が助けられたため、一方的ではない支えあう関係として説得力がある。
オバケのイメージをつくった映画部の少年を、立派なホラー監督になれると海藤が評価するオチもいい。他のプリキュアの微妙な表情で、あくまで真面目な海藤がギャグとして成立する。
そして会場に戻り、ダンスの相手役として海藤は意外な人物を指名する。いや、たしかに展開からして最も適切な相手役だし、その「ナイト」をリードしかえすことで海藤は復活できたわけだが、ちょっと映像の多幸感がすごすぎて現実感がなかった。


大田和寛は、プリキュアTVシリーズ作画監督としては初登板。為我井克美や美馬健二も原画に。
上野ケン作画監督のように自分の絵柄に染めあげるのではなく、意外と要所を押さえた修正にとどめていた。
さらに印象的だった戦闘のクライマックスと、最後のダンスシーンは原画を手がけたとのこと。

おそらく演出の芝田浩樹コンテから大きくふくらませているのだろう。構図は固定しつつも奥行きあるカメラワークをつけて、艶やかなキャラクター作画とともに画面を華やかにしていた。倉庫内で物品が連鎖して倒れるカットにいたっては、精緻な立体感に暗い色指定もあいまって、東映TVアニメらしからぬリアリティ。

*1:両立という結論が良くも悪くもベタに感じたので、感想では言及しなかった。『Go!プリンセスプリキュア』第5話 3人でGO! 私たちプリンセスプリキュア! - 法華狼の日記

*2:第5話と比較で引っかかりをおぼえたという感想を書いた。『Go!プリンセスプリキュア』第8話 ぜったいムリ!?はるかのドレスづくり! - 法華狼の日記