法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『映画はなかっぱ 花さけ!パッカ〜ん 蝶の国の大冒険』

Eテレで放映されているショートアニメ『はなかっぱ』を、2013年に初映画化した作品。それがEテレで放映された。併映短編の『ザッツはなかっぱミュージカル』が先に通常枠で放映されていたことは気づかなかった。
アニメワールド+BLOG:NHK | そのほかのアニメ | 春といえば、花。花と言えば、「はなかっぱ」。映画はなかっぱ、放送決定!
全くシリーズに思いいれがなく、キャラクターも把握していない。リアルタイムに別作品を視聴する時に少し見かけたことがあるのみ。そんな状態で映画版だけを見るという、最近では珍しい経験が楽しかった。


ポイントとなるのは映画オリジナルらしい蝶の国。そこに母親が拉致され、取りもどそうと父親が追いかけ、特殊なメカで子供たちが追い越していく。目的地に向かって海や山を越えていく、シンプルな冒険劇だ。
どこを切っても、よくある子供向けアニメ映画ではある。敵味方それぞれの家族愛がテーマなのは平凡。特殊なメカが発進する時の『サンダーバード』パロディも、完成度は高かったが濃いネタではない。クライマックスのアクションはダイナミックさとアイデアが好印象だが、映画らしくまとめるため必要最低限に描写した程度。
映画ゲストキャラクターのタレント声優が多すぎて、あまり使いどころが良くなかったのもマイナス。女王を演じる江角マキコは、息づかいや叫びは悪くないが、日常芝居では抑揚が少ないというタレント声優では珍しいパターン。声優経験のある松嶋尚美は達者だったが、あまり出番がない。


しかし、既存の子供キャラクターがすごくいい。初期『クレヨンしんちゃん』を思わせるが、それ以上に全員がゲスくて、能力も低い。映画ゲストキャラクターの良い子っぷりと良い対比だ。冒頭からして、はなかっぱが母親から説教されてグチグチと文句をいうという情けなさ。冒険時にいたっては、砂漠で巨大アリ地獄に飲まれそうになった時、全員がまわりを蹴落として自分だけ生き残ろうとする。
さすがに主人公はなかっぱだけは、頭から色々な植物を生やす能力で活躍し、なかなかアクション演出も面白かったが、通常は最もスペックが低い。砂漠でひとりだけゲッソリ乾いている姿には大笑い。水を吐き出して噴水のふりをする必死さもギャグとしてキレキレ。スペックが高くないためツッコミに回らざるをえない主人公像に、『ジャングルはいつもハレのちグゥ』のハレを思い出す。
母親世代の異常なバイタリティと、父親世代の高いスペックが無意味なまま終わる展開も、なかなかキャラクターアニメとして楽しかった。