法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『岩井俊二のMOVIEラボ』#1 SF編/#2 特撮編

岩井俊二監督を司会に迎え、技法やジャンルごとに映画の歴史をふりかえる情報番組。さらに各回のテーマにそって、映画スタッフの卵たちがスマートホンで撮影した、1分間の自主制作映画を講評していく。
http://www4.nhk.or.jp/movielab/
NHK教育の毎週木曜日23時から45分間が放映され、その次の木曜日深夜0時から0時45分まで再放送。全6回予定。
濃くない視聴者を想定してか、岩井監督は映画の専門用語を使わないし、ゲストの著名人も他のイベントと違って淡々と語る。特に#1と#2はゲストの庵野秀明監督や樋口真嗣監督まで、あまり熱を感じないのが不思議だった。
意外と良いのが、資料として古典映画の流れる時間が長いこと、その解説がしっかりしていること。そして学生たちが作った1分スマホ映画が見られる出来であること。


まず#1は、SFといっても広すぎるので、宇宙を題材とした映画を中心に。『月世界旅行』や『2001年宇宙の旅』は順当なところ。ゲストがメインスタッフだった作品として、アニメの『王立宇宙軍 オネアミスの翼』も紹介する。
カニック描写の影響元として、『サンダーバード』に代表されるジェリー・アンダーソン作品の評価も長かった。ディテールに対する絶賛と、実際は見ばえ優先でおかしな描写もあるという指摘が面白い。しかしこれは特撮編で語るべき作品では、という疑問を持った。
スマホ映画は、最初がシンプルな時間移動物。講評では伏線が評価されていたが、ただ誰かが見ているのではなく、時間移動の秘密を見られないようにと注意する意味を重ねて、もっと真相を隠すべきだったと思う。オチも漠然とした描写で、もっと入れ子細工的な考えオチにしてほしかった。
次は日常的な電脳物。記憶をSDカードに保存できる物語を、身近な素材だけで撮影する。けっこう古典的なSFなので、新味はないがまとまりはいい。しかし説明を抑えるのはいいとして、映像はもっと見やすくしてほしかったかな。
最後は、終末前夜物。若者たちが青空や互いを撮りながら淡々と語っていく。良くも悪くも若者の自主制作映画といった感じだ。しかし撮れないものを描くメタ映画にしたいなら、終末を告げる存在は肉眼でしか見えず、スマホに残らないというくらいSFとしてわかりやすくしても良かったのでは。


#2は、米国で発達したコマ撮りアニメ怪獣と、日本で発達した着ぐるみ怪獣の違いを追いかけながら、出演者が思いいれある作品を語っていく。技法に制約されるためキングコングはビルに登り、ゴジラはビルを壊す。
面白かったのは『巨神兵東京に現わる』のメイキング映像。地上波の宣伝番組では見られなかったような撮影風景が多く確認できた。映像ソフトにはメイキングが収録されていなかったので嬉しい。
スマホ映画は、まず最初が巨大怪獣物。ほとんど出オチなので、ネタを割らないよう注意する出演者が涙ぐましい。しかし簡単な合成を駆使して、マスクをかぶっただけで充分に成立しているのが面白い。カメラのパンが短すぎるという指摘も具体的で良かった。
次は、コマ撮りアニメの一種。被写体をスマホ内にとりこんでしまうというSF展開。モニター内の人間を自在に操っているかのように、連続写真をつなげて映像にしていく。特撮としては意外とオーソドックスな技法だが、かけた手間が効果をあげていて演出もまずまず良く、見ていて楽しい。誰もがスマホでたがいを撮りあえる現代ならではのオチも悪くない。
最後は、特撮ヒーローパロディ。たくさんのヒーローが出てきて怪人に対してリンチ状態になるというネタは、もはやベタすぎてコメディとしても時代遅れ。出演者全員が半笑いなのもマイナスで、コメディだからこそ描写はシリアスに徹するべきだ。そこが最初の怪獣物に劣っている。良かったのは、ゆるキャラが乱入しかける部分くらいかな。