法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season13』第9話 サイドストーリー

昼は介護士として働き、夜はキャバクラで勤めていた女性が殺害された。現場に待ちあわせていた男性客が現行犯に近いかたちで逮捕され、事件は終わったかに見えた。
しかし他に真犯人がいるという匿名の通報がなされ、特命係は介護の現場へと捜査に向かう。介護されていた老女性は、ドラマや現実の刑事を面と向かって馬鹿にするような性格だった。
一方の世間では、ふしだらな被害者へのバッシングが始まっていた……


サブタイトルで明言しているように、事件の本筋とは別個にテーマとミステリの要点があるパターン。
真犯人の正体だけなら、推理するまでもない。誠実な介護をしていた被害者の記録をひもとき、介護現場の状況を明らかにしていく推理に見どころがある。
まず、介護資格をとるために風俗産業で働いていたことがバッシングされるのは、今でも見られる問題だ。最近にも日本テレビのアナウンサーになるはずだった女性が内定を取り消され、訴訟がおこなわれている。
介護負担のため妻に離婚され、老母を介護するため不定期の仕事をつづけるしかない男性の問題にいたっては、今後さらに根深くなっていくだろう。しかも政府は加速させる方針だ。
http://www.asahi.com/articles/ASGDH5DC0GDHUTFL00F.html

政府は、介護保険サービスの公定価格である「介護報酬」を、来年度から引き下げる方針を固めた。引き下げは9年ぶり。急増する介護費用の抑制が狙いだ。財務省厚生労働省で下げ幅の調整が続いているが、2〜3%が軸になりそうだ。


そしてドラマは、介護問題を個々の家族に負わせてはならないという結論を、真相と直結するように描いてみせた。
あくまで被害者の家族は美しい関係だったし、介護される家族も愛を失ってはいない。その上で、家族は仲良くしなければならないという強迫観念が、不幸を生みかねないという真相を、杉下右京があばいてみせる。現代的かつ現実的な家族観をもって、社会全体の負うべき責任をシンプルに示した。
ただ、ミステリとして無駄がなさすぎて、物語がきれいに閉じるので、社会派ドラマとしては弱いか。いびつな物語であったほうが、テーマがしこりとなって印象に残りやすい。