法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『劇場版 FAIRY TAIL -鳳凰の巫女-』

盗賊団を捕獲する仕事に失敗し、ギルド「妖精の尻尾」の溜まり場に帰った主人公たち。そこにエクレアという少女と、モモンという不思議な鳥が依頼にやってくる。
エクレアの持っている鳳凰石をめぐって、さまざまな思惑の入り乱れる戦いと、忘れられた過去への旅が始まる。


原作者関与のオリジナルストーリーで2012年に公開されたアニメ映画。映像ソフトには、劇場版序章として約10分間の短編「はじまりの朝」も収録されている。
藤森雅也監督ということで評判が高く、A-1 Pictures制作といいつつ実制作も亜細亜堂らしいと聞いて、人物や世界の設定を全く知らないまま視聴した*1。そのため原作やTVアニメ版との差異はわからない。
86分間しか尺がないのに登場人物が多く、その見せ場が次々と展開されては終わっていく。冒頭の戦いが人物紹介をかねているので、設定がわからないことはないが、個々人のドラマは掘りさげないまま。さまざまな能力を使ったバトルも、必要最小限のアクションで終わる。
あくまで外伝作品として、エクレアとの出会いと別れのドラマが進んでいく。そのエクレアの過去の重さが、そのまま劇中の歴史の重さとなり、原作キャラクターの記憶に残るかたちで完結した。同じ十川誠志脚本の『劇場版 BLEACH MEMORIES OF NOBODY』と似た構成だ*2


主要キャラクターが多い作品では、等分に見せ場をつくっては物語が散漫になりがち。ゲストキャラクターを主軸にし、その関わりで原作キャラクターを描いたのは悪くない、と原作未読者としては感じた。
それでもバトルの見せ場は散らばりすぎていたが。藤森雅也作品にしては作画の突出したカットが見当たらない。主要キャラクターのバトルを見せるため、相手する敵キャラクターを一人一人に用意したのは、さすがに多すぎたか。


手放しに良かったのはエクレアとモモンの出会いを描いた「はじまりの朝」。前日譚として、ふたりだけのドラマが描かれていく。シンプルな人間関係だからこそ、短い尺でも時間の積み重ねを表現できる。
映画の後で視聴したので、その出会いがより印象深く感じられた。逆に、先に前日譚を視聴していれば、映画のドラマに強く思いいれできたかもしれない。どちらが良かったろうか。

*1:原作未読者としては主要キャラクターに女性が多いことが印象的だった。ギルドのリーダーはエルザという女性だし、エクレアとのやりとりも、少年ナツではなく少女ルーシィとが多い。

*2:ゲストキャラクターの少女が記憶喪失という設定も同じ。感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080215/1203090353