法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「カルト宗教をソースに記事あげとな?」

ただ事実を指摘しがたいだけの暗闇の陰謀より、恐るべきことがある。白昼に堂々とおこなわれているため、事実を指摘しても批判として打撃にならないことだ。


朴槿恵大統領の名誉を棄損したとして、産経新聞のソウル支局長が起訴されている。
http://www.47news.jp/CN/201410/CN2014100801001778.html
それにからめて、韓国紙が大統領周辺から告訴を受けたという記事をあげていた。
【本紙前ソウル支局長公判】あの元側近が人事介入? 世界日報が報道 大統領府またも激怒 社長ら6人を告訴(1/2ページ) - 産経ニュース

【ソウル=藤本欣也】韓国紙、世界日報は28日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の元側近で、旅客船セウォル号の沈没事故当日、大統領と会っていたとの噂があった鄭(チョン)ユンフェ氏が、朴政権の高官人事に介入していたとの疑惑を報じた。
 大統領府の総務秘書官ら8人は同日、報道は事実無根として、同紙社長と編集局長、社会部長、記者ら6人を名誉毀損(きそん)容疑で告訴した。

 産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が、ウェブのコラムで取り上げたのも鄭氏。加藤前支局長はコラムで、沈没事故当日、朴大統領が鄭氏と会っていたとのうわさの存在を取り上げたところ、ソウル中央地検の取り調べを受け、10月、情報通信網法における名誉毀損で在宅起訴された。

まず、一国の大統領がメディアに司法を使って圧力を加えるべきではない。どれほど低俗な記事であっても、権力者へ矛先が向かっている限りは、社会的な弱者への攻撃とは同等視できない*1
しかし、産経新聞朴槿恵大統領にまつわる風評へ信憑性を独自に加えたこと自体は擁護できないし*2、似た件で告訴された情報源の正体を隠すことも批判せざるをえない。


この産経記事で引いている世界日報は、単なる新聞紙などではない。日本と韓国で同名の新聞が発行されており、やや論調が異なりつつも提携し、反共産主義という思想を共有している。その背後には、朝鮮半島で起こった新興宗教統一協会」がいる*3
統一協会は、教組が相手を決めておこなう合同結婚式や、高価な壺を売りつけることで悪名高かった。後者は代表的な霊感商法として知られており、たとえばTVアニメ『暁のヨナ*4の第7話で、宗教的な言動へのうさんくささを表現する台詞で出てくる。
共産主義であるため、日本の保守系政治家とも関係が深い。今月にも首相周辺の政治家が統一教会のイベント「祝福原理大復興会」に参加していたという。
安倍首相側近らが続々と統一教会詣での“怪” 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

 本誌が入手した資料によると、来賓挨拶の欄には、自民党総裁特別補佐の萩生田光一衆院議員(東京24区)、参議院議院運営委員長の中川雅治参院議員(東京)の名前が記されていた。

 萩生田衆院議員は安倍首相の懐刀として従軍慰安婦問題に関し河野談話の「骨抜き」発言でも注目を集めた。一方、中川議員は昨年の参院国家安全保障特別委で特定秘密保護法案を強行採決した委員長だ。元大蔵官僚で憲法改正推進本部副本部長、税制調査会幹事などを務める知恵袋的存在だ。会場にいた信者が語る。

これらのことは、おおむね統一協会が公表している情報からも確認できる。政治家とのつながりも、過去から何度か主要メディアが批判的に報じてきた。
しかしそのつど忘れられ、統一協会が日韓の政治に影響力を持ちつづけている。本当に恐ろしい陰謀は、白日のもとにさらしても見逃され、力を失わない。

*1:民事訴訟などで正面から争ったりすることは、間違っているとはいわない。

*2:産経・名誉毀損記事の悪意を問う(1)【産経新聞 前ソウル支局長、起訴問題】 - たびのあとさきをはじめとした一連のエントリで、id:tabisaki氏がていねいに情報源と比較し、産経新聞に独自の問題があったことを指摘している。

*3:正式名称は「世界基督教統一神霊協会」で、教団の用いる通称は「統一教会」。

*4:この作品自体は、嫌韓から意味不明な誹謗をされている。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20141013/1413158826