今回は前後ともに原作あり。ほぼ忠実にアニメ化しているが、クライマックスをアニメオリジナルでふくらませているため、それぞれオチが同じなのに少しばかり雰囲気が違う。
「クローンリキッドごくう」は、リキッドをかけた頭髪に息をふきかけると、小さな分身になるという秘密道具が登場。
のび太の分身であるため、力になるどころか足を引っぱるという、原作でくりかえされるパターン。しかし今回のアニメ化ではスネ夫が協力するというオリジナル展開で、ジャイアンへ復讐するため策をめぐらし、いいところまでいく。空き地の土管を利用したり、「鶴翼の陣」を用いたり、けっこう視覚的に納得できる作戦が展開されていた。
コピペなどを活用して、分身をきちんと作画で動かしていたのも良かった。
「お金のいらない世界」は、「もしもボックス」を使って社会構造が異なる世界に行くエピソードのひとつ。
取引きに金銭が必要ないのではなく、商品を買う時に金銭を押しつけられる。貧しい家は押入れに札束があふれかえり、裕福な家は金がない。そうした刺激的な思考実験が展開され、街中に札束があふれるビジュアルとあいまって人気が高い。『絶望先生』に類似したエピソードがあり、問題になったことでも有名*1。
金銭が物理的な負担として襲いかかってくるわけだが、そのような経済が成立するのかどうか。一種の呪いの発展として貨幣が生まれた世界と考えればいいのか。それとも債権の変形のように考えればいいのか。考えれば考えるほど奥深そうだが、知識がなくて考察が進まない。
ちなみに乞食(?)が金をもらってくれるようたのむ原作の一場面は、今回はアニメ化されず*2。かわりに銀行強盗と*3、宝くじにヤキモキするオリジナル展開が描かれる。前者はともかく、後者は社会設定と関係なく、番号確認を引きのばすだけでつまらない。
できるだけ世界の独自性を発展させたようなオリジナル描写が見たかった。たとえば原作では描かれない税金の位置づけを描くとか。
*1:http://yamakamu.com/archives/3101096.html
*2:http://d.hatena.ne.jp/orangestar/20141128/1417171310でid:orangestar氏が考察している「個人の信用が無限大になる」という説は面白いが、この原作描写からすると不充分だとわかる。
*3:原作では銀行がきちんと登場しない。原作だけで考えるなら、銀行に金銭を置くことができないゆえに、屋内へ金銭を貯めこむしかないという設定も考えられるか。