法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season13』第1話 ファントム・アサシン

初回2時間スペシャルとして放映された。日本在住のロシア人が米国大使館へ亡命する発端から、謎の怪死事件が連続していく。その関係者をさぐっていくと、ロシアの諜報活動が背景であることが明らかに……


国家機密の漏洩を立件しがたい問題をテーマとした、秘密保護法を意識したような物語。サブレギュラーやメインゲストが「国賊」「売国奴」と口走ったりする。これまでドラマで用いられてきた「東亞民主共和国」や、新たな東ヨーロッパの架空国ではなく、はっきり現実の国名を出しているのも新しい。
もちろん、国家のためという大義での殺人を、杉下右京という男は「思いあがり」と喝破する。もともと違法行為に対しては、どのような思想や動機であれ、ためらわず批判する性格ではある。しかし今回は国家機関がかかわっているので、法治国家の根幹をゆるがすとして、いつもより厳しかった。
しかもドラマは謎解きで終わらない。最後にちょっとしたツイストが入り、国家のためという大義が完全に崩れたことが視聴者にだけ明かされる。ここで今回は東亞民主共和国が登場しなかった映像上の意味もわかった。このドラマの前例から考えて、さらにseason13のどこかでフォローする後日談が描かれるだろう。


ちなみに連続怪死事件の真相は、必要以上に複雑なもの。より正確にいえば、もっと連続性の少ない不可能犯罪のように演出できたはずなのに、関係者のアリバイを入念に確認していないから、そもそも事件に謎らしい謎が感じられなかった。
サブタイトルから考えると、もともとは関係者の全員にアリバイがあるという謎が中心だったのではないか。本格ミステリ好きとしては、ちょっともったいなく感じた。