法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』怪談ランプ/なんでも空港/竜宮城の八日間

「映画公開直前 夏祭りだよ! ドラえもん1時間スペシャル」と題して、夏にちなんだエピソード2本と、原作者の別作品キャラクターが登場するエピソード1本をアニメ化。
来週公開の3D映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌と映像を使った特別OPや、来年の映画『のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』の予告映像も公開。直後には『ドラえもん』の豆知識を競い合う2時間SPのクイズ番組も放映。


「怪談ランプ」は清水東脚本で、語った怪談とそっくりな出来事を起こす秘密道具が登場。スタッフがリニューアルした2005年にアニメ化されているが、もう十年近くたつので初見の視聴者も多いだろう。
ほぼ完璧に原作を映像化していて、不満点は少ない。そのまま映像化するには少し原作が短いのだが、アニメの尺を短くすることで足し引きせずにすませた。泥棒が包丁を持っている描写が大根に変えられていた自主規制もあったが、障子ごしのシルエットがそれらしいので、怪談ランプの機能は発揮された描写になっている。


「なんでも空港」は水野宗徳脚本で、ありとあらゆる飛行物体を着陸させるシート状の秘密道具が登場。夏らしく昆虫採集を楽しんだり、しずちゃんが逃がした小鳥を捕まえたり。
これも展開そのものは原作に忠実だが、映像面でスケールアップして、それがアニメ独自の面白味になっている。さまざまな紙飛行機や昆虫をていねいに作画で動かしたかと思えば、魔美やウメ星デンカだけでなくT・Pぼんやロボケットのようなマイナーキャラまで登場。『藤子・F・不二雄 大全集』が全巻刊行されて、マイナー作品の知名度が増したという判断のためか。それとも藤子・F・不二雄ミュージアムで上映されている作品『すすめロボケット&ドラえもん「決戦!雲の上の竜巻城」』のためか*1
逆に原作と違ってQ太郎は出てこない。全集には収録されたが、やはりアニメとなると著作権の問題がかかわってくるのかな。それに結末も、原作より状況はスケールアップしているものの、コンテで主観的な映像にしてしまい、逆に状況の危機感が薄れてしまっているのが残念。


「竜宮城の八日間」も清水東脚本で、浦島太郎伝説が事実かどうか自由研究しようとして、みんなで時間旅行と海底冒険する。2005年の大晦日SPでアニメ化された時と同じく、30分近い中編となっている。
もともと原作が『のび太の海底鬼岩城』の原型となるくらい短編作品としては頁数が多い。さらにアニメオリジナルで逃亡劇を加えて、自然に中編として映像化できていた。ただ物語展開としては、情景描写を重視しつつ、小道具を印象づけるようなアレンジを加えた2005年版が好みかな。
映画シリーズや誕生日SPを思わせるアニメオリジナル描写も良し悪しだった。全体として作画が弱いため、過去作品の素晴らしいアクションと比べてしまい、相対的に評価が落ちてしまう。特に3DCGにたよったトロッコ逃亡劇は、作画がはじけていた「アリガトデスからの大脱走*2と比べるべくもない。


映画『STAND BY ME ドラえもん』OPだが、これに限らず、どの事前情報も露骨な感動押しがつらい。3DCG映像の挑戦とわりきって、もっとシンプルな作りでもよさそうなのに。
ただ、ライトな人情劇として手堅くまとめてきそうな可能性も感じる。それならば、監督が誠実であろうとして娯楽性を失って空中分解してしまった『のび太と緑の巨人伝』に比べれば、多くの観客にとって楽しめるのかもしれない。


映画『のび太の宇宙英雄記』の予告映像は、7月19日にインターネットで公開されたものと同じ。こちらは誕生日SP「決戦!ネコ型ロボットvsイヌ型ロボット」*3やPV「F組 あいうえお」等を手がけてきた大杉宜弘が、初めて長編作品を監督する。

現時点の情報だけで判断するなら、これまで元気たっぷりなアニメーションを見せてくれたアニメーターらしく、とにかく楽しいアクション活劇に徹してくれそう。それでいて予告映像の最後を見ると、楽しいアクションはフェイクという可能性も感じる。どちらに転ぶか、こちらは素直に楽しみだ。

*1:http://fujiko-museum.com/theater/

*2:感想はこちら。誕生日SPらしいオマケとして放映された「F組 あいうえお」の感想も。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120907/1347063632

*3:感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20100903/1283616782