法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』さかながボートに大変身/流行性ネコシャクシウイルス

アニメオリジナルの前半と、原作初期をアニメ化した後半と。
後半の絵コンテで、ひさしぶりにパクキョンスンの名前を見た。たしか監督名義の仕事がなかったため昨日のエントリでは紹介しなかったが、女性アニメ演出家として古くから活躍しており、印象深い一人だ。
日本の女性アニメ監督 - 法華狼の日記


「さかながボートに大変身」は、生物の特徴をとりこむ秘密道具「海の生き物シップ」が登場し、スネ吉のクルーザーにはりあう。
海中の景色が適度なデフォルメでアニメ化され、探検物としての楽しみは充分。生態模倣技術という概念をもちだしたり、さまざまな海の生き物について解説したりと、理科的な興味も満足できた。
ちなみに最近の研究によると、劇中で説明された魚の速度は不正確な調査を踏襲したものだという*1。ただ、あくまで秘密道具で生物の特徴を模倣しただけなので、科学考証の甘さは致命的ではないと思う。


「流行性ネコシャクシウイルス」は、言い聞かせたとおりの流行を作りだす秘密道具が登場。最新流行とされている劇中のファッションを見て、下記Togetterを思い出したり。
アニメキャラの私服が現実的にはどこが問題かという具体的な指摘 - Togetter
しかし流行のバカバカしさを相対化するエピソードなので、作中のファッションセンスが素人目にひどくても、それはそれで成立している。
しかも劇中で流行らせたファッションだが、高い帽子はビクトリア朝に流行したし、裾の広いズボンと厚底靴は1960年代に流行した。それを何の説明もせず、のび太たちの思いつきとして流行させる皮肉。それでいて最後のオチは、流行を相対化しているつもりの人間も、どこかで流行にとらわれているという逆説に解釈できる。風刺劇として面白い。
ちなみに今回は原作初期のエピソードのため、ドラえもんの保護者性が弱く、かなり悪乗りしている。ただしミニスカートを限りなく短くさせようとする場面では、原作より少しドラえもんをマイルドにしていた。
他のアニメオリジナルとして、のび太の格好を流行させようとする場面もある。のび太そっくりになったイメージのしずちゃんに、中性的なエロチシズムを感じてしまったのは良いのか悪いのか。