法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『シドニアの騎士』雑多な感想

細部までSFらしいディテールをしきつめながら、ドラマとしては主人公最強ハーレム物として平易で見やすい。娯楽として毎回の引きがうまいし、そうして引いた事件を次回で決着つけるので満足感もある。
宇宙漂流物だったりデススター攻略だったり、どこかで見たようなエピソードも多いが、独自性のある描写もあるので新鮮味に欠けることはなく、むしろ物語のバラエティを広げている。
3DCGらしさは露骨だが、もともと原作の人物絵に癖があるため、手描き作画よりも雰囲気は再現できていた。宇宙空間らしい広いカメラワークと、無重量らしい挙動の再現にも、3DCGはうってつけ。


例外状態の維持による軍事独裁の継続という根幹設定も、非武装主義者の描写で見やすくなっている。基本的には愚劣で頑迷な集団と描写されているが、全否定はされていない。
たとえば首脳部が不老者であることや、対抗武器が敵を誘発する原因であることなど、作品における初めての言及が、非武装主義者の主張だった設定がいくつかある。主張された当初は作中の一般人も信じず、視聴者も笑っているが、一理はあったのだというバランス感覚がうまい。
もちろん間違った解釈や陰謀論も主張しているのだが、情報統制された状況で相応に真実を探求する集団と設定されているわけだ。それが作品世界における人々の多様性につながっているし、思想に引っかかりを感じても緩和される。


バランスのうまさは最終決戦でも見られる。作戦の本隊は主人公と別行動していて、後方の司令部が細かく指示を出しつづける。因縁のある最強の敵と一対一で主人公がわたりあってドラマの中心となりながら、全体の成功や失敗に目配りされている。
ただ、主人公が艦長から特別に目をかけられている描写は多すぎるかもしれない。このまま2期に入って鼻につくようにならないか、少し心配。