法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

石井孝明氏は「国益」のためならばデマゴーグを許容する

石井氏個人に対して、以前に『慰安婦と戦場の性』の書評記事を書いていた時に批判したことがある。
従軍慰安婦問題で、池田信夫のしっぽが「国益」を主張する - 法華狼の日記
従軍慰安婦問題についての見解が全体的にひどく、アングレーム国際漫画祭従軍慰安婦を題材にした作品が出展された時、下記のようにツイートしていた*1

問題の3DCGアニメは鄭書云証言にもとづいており、2012年に札幌国際短編映画祭で上映されたこともある。
11分、短いが響きの大きな慰安婦ハルモニの肉声 : 文化 : hankyoreh japan
日本語字幕版も公式に公開されており、以前に下記エントリで紹介したことがある。
アングレーム国際漫画祭の情報を落穂ひろい - 法華狼の日記


慰安婦の証言にもとづいた約10分間の3DCG作品。軍人による直接的な強制連行ではなく、村長に騙されて外国の慰安所に集められた事例である。

しかし石井氏は狭義の強制連行を否定することに意味はないという認識を持たず、反射的な疑問から「妄想」と決めつけているだけ。
当時の日本軍がヒロポンという名前で覚醒剤を利用したり、占領地にアヘンを広めていた歴史も知らないようだ。
NHKスペシャル
「遺体を犬に?」という疑問は、5分50秒あたりの、犬のように遺体が埋められたという証言を勘違いしているらしい。
石井氏はアゴラ記事でも同じ勘違いをつづけ、作品全体を無根拠に否定している。
http://agora-web.jp/archives/1582411.html

反日活動をして捕まった父を助けるために、千人針工場で働くと騙され、スマトラに少女が連行される。麻薬を打たれ、働かされ、病気になると放置されて犬の餌になり、終戦時には殺されそうになるが逃げ出す。明らかに間違いの羅列。


また、日本軍の虐殺や過酷な占領といった戦争犯罪については認めているようだが、『はだしのゲン』の戦争犯罪描写に対して、防衛庁戦史叢書に書かれていないという理由で否定している。
http://agora-web.jp/archives/1554148.html

もちろん旧軍には残虐行為をした軍人はいたであろう。しかし旧ナチスドイツが欧州で、旧ソ連がドイツ戦で行ったように、組織で統一的な命令の下で残虐行為を展開した形跡はない。『はだしのゲン』に記されたように、旧軍全体が統一的に残虐行為を行ったという事実が記された戦史書、公文書があったら、教えてほしい。伝聞情報など、あやふやなものしかないはずだ。

加害国側の資料にのっていないことを根拠に否定すること自体が誤りだ。しかも実際には日中共同歴史研究で、日本側も三光作戦と呼ばれるような粛清作戦があったことを認めている。
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010013101000466.html

軍人だけでなく、中国の非戦闘員に多くの犠牲を強いた。物資と食糧確保のために手段を選ばない討伐作戦は「三光作戦」という国際法違反行為の背景となった。

それに「素人戦史マニアとして、多少は詳しい」と自称しながら、北支那方面軍の「第一期晋中作戦復行実施要領」すら知らないらしい。敵性と考えられた成人男子の非戦闘員を「殺戮」するよう決めており、燼滅掃討作戦がおこなわれた証拠のひとつとして有名だ。
ネトウヨの言う通りなら日本人は皆殺し - Apeman’s diary


そして石井氏は、グレンデール市の慰安婦像撤去請願についてのNHK記事を受けて、「テキサス親父」に感謝するツイートをしていた。

ところが後日、「テキサス親父」として活動している人物について、「そっち系の人が入れ知恵しているのが見えてきた」とツイートした。
NHK記事でも「署名を呼びかけた男性の代理人を務める日本人男性」*2がいると書かれており、気づくのも今さらな話であるが。

そして「別にいいけど」という結論が重要だ。これでは味方でさえあればデマゴーグも許容すると宣言したようなものだ。
逆に考えると、たまたま石井氏が妥当に見える記事を書いたとしても、情報として使えない。石井氏個人しか裏づけがない場合、デマと知りつつ利用している可能性があるので信用できない。石井氏以外の裏づけがある場合、わざわざ石井氏の記事を使う意味はない。
いっそのこと石井氏はジャーナリスト廃業を宣言し、これからフィクションの世界に身をおくと明言すればいいのではなかろうか。それが身の丈にあっている。