法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『宮本武蔵』第二夜

テレビ朝日開局55周年スペシャルドラマの後編。
『宮本武蔵』第一夜 - 法華狼の日記
前回を受けて、三十三間堂の決闘から、吉岡一門との七十六人斬り、佐々木小次郎と共闘しての山賊排除、巌流島での決闘までを描く。


第二夜は、第一夜以上にすばらしい殺陣が楽しめた。スポーツ報知記事によるとノースタントだという。
http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20140310-OHT1T00189.htm
さすがに七十六人斬りの中盤は、木村拓哉の年齢を感じさせる走りの遅さと、だだっ広い野原で多人数に囲まれた状況のため説得力が欠けていた。しかしそれも前後に騙し討ちあう武蔵と吉岡の卑怯さは良かった。
高低差や障害物を多用すれば多人数との戦闘で勝っても説得力が出る。その意味では、山賊から村を守る戦いはとても良かった。
ただひとつ残念だったのは、血飛沫がほとんど出なくて、きちんと刃を肉体に当てて引いているのに、斬っているように見えにくいこと。もちろん手間だけでなく自主規制の関係もあっただろうから、制作者を責めるのは酷だろうが。


ドラマで見ても、基本は原作通りとはいえ、興味深いところがいくつかあった。
まず、関が原の合戦において武蔵が戦ったという史実と、西軍についていたという原作設定を利用して、徳川時代がつづくかぎり仕官ができないという問題を要点におき、なぜ剣の道を進むかという問いを主人公へつきつける。この梯子外しのため、第一夜の冒頭に関が原の合戦を持ってきていたのだろう。佐々木小次郎と共闘して、新たな剣への道を見いだすまで、ずっと武蔵は無意味な人殺しをしていたのだということを構成の段階で表現している。
巌流島の戦いに決着がついて、そのまま武蔵が去ろうとする一瞬でたちきるように終わるのも、独特の無常さが感じられて印象的だった。