法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

アングレーム国際漫画祭の情報を落穂ひろい

アングレーム国際漫画祭で、日本作品がノミネートされているという情報と、ALL JAPANを称する団体がしめだされたという報道 - 法華狼の日記
まず上記エントリで言及したように、いくつかの賞に日本の作品がノミネートされていたのだが、どれも最終的に逃したらしい。
アングレーム国際漫画祭2014 受賞リスト :: 1000planches
少しばかり残念ではある。たとえば今敏作品が受賞すれば、制作が止まっている遺作アニメ映画『夢みる機械』が再始動するはずみがつくかもしれない、という期待もあった。
チェーザレ 破壊の創造者』も個人的に追いかけている作品であり、欧州の15世紀の史実にもとづいた作品として、現地でどのように評価されるか興味があったのだが。
http://cesare-borgia.com/content/ja/
ちなみに舞台の中心はイタリアで、序盤の視点人物カノッサもイタリア出身だが、タイトルにもなっているチェーザレは神学校でスペイン側の代表。そのライバルとなる派閥がフランス側なのだが、当時は粗野で未開な地域として、ゲルマン民族らしい野卑たイメージで描写されていた。そのような作品がフランスで翻訳出版され、漫画祭にもノミネートされたこと自体が面白い。


また、従軍慰安婦問題をテーマとした展示会について。
下記の写真スライドショーで、いくつかの作品1枚絵と、主催者も参加している開幕の風景を見ることができる。*1
'負けない花'... アングルレムグクチェマヌァチュクチェ慰安婦被害者漫画企画展1/24
アニメーションも4作品が展示されていた。そのひとつでTBSが「少女が強制的に慰安婦にされる物語」*2と報じた『Her story』は、YOUTUBEに日本語をふくむ各国語版がアップロードされている。

慰安婦の証言にもとづいた約10分間の3DCG作品。軍人による直接的な強制連行ではなく、村長に騙されて外国の慰安所に集められた事例である。
デフォルメされているが、かなり映像のクオリティが高い。1年ほど前に韓国の短編アニメーション作品をいくつか視聴したことがあるのだが、その時も手描き作品よりも3DCG作品の完成度が高い傾向を感じた*3
さらに『Her story』の公式ブログを見ると、他に紹介している作品も全体的に軍事趣味的な印象を受ける。
http://blog.naver.com/herstory2011/
そしてURLにも「2011」とあるとおり、韓国語版をYOUTUBEに上げたと報告するエントリによると、完成したのは2011年7月という。*4
http://blog.naver.com/herstory2011/179003276

今や少女の話全体映像を上げることになりました。

2011年7月に完成させてすでに1年6ヶ月が流れてしまいました。

多くの方々が見て多い所にくんで配られたら良いです。

つまり漫画祭に向けて政府に支援されながら制作したわけではなく、当時の出来事に興味をもつ制作者が完成させていた作品が、漫画祭の展示作品に選ばれたという順序らしい。
たしかに以前、韓国政府から支援されて作品を制作していることも報じられていた。しかしその漫画家が選ばれたのも、韓国出身特攻隊を題材にしたりと、もともと歴史に興味を持っていたためだった。
「慰安婦漫画で日本が倍返しだ!」「見た目は派手だが、脇はがら空きだぞ」 - 法華狼の日記

韓国漫画連合は何人かの作家候補を置いて苦心の末にキム氏を選んだ。 キム氏が韓国人神風特攻隊を描いた‘瞬間に負ける’(2003年)で第13回大韓民国漫画対象優秀賞を受賞するなど当時時代状況を入れた漫画をたくさん描いてきたためだ。

報道記事を受けて立ちあげてから漫画祭まで半年間もなかった「論破プロジェクト」との質の違いは、このような背景にも原因があったのだろう。


また、1月29日に予定されていた韓国側の説明会が中止させられたと報じられていたが、1月30日に韓国メディアに対して特別な要請を出していたという。それを伝える東亜日報記事を読んだ印象としては、「日本側」の行動に対して対抗するような意思すら感じる。
「慰安婦漫画」に欧州が涙、日本の妨害に世界が憤る : 東亜日報

開幕前の先月29日には、趙允旋(チョ・ユンソン)女性家族部長官が参加してパリで開かれる予定だった「散ることのない花」の説明会が、アングレーム主催側の要請で当日中止となった。主催側が日本の圧力に屈して中止したという一部報道もあった。

しかし、フランク・ボンドゥ組織委員長は30日、異例にも韓国メディアとの共同記者懇談会を要請し、「パリで韓国だけが声を出すのではなく、アングレームで私たちと共に声を出そうという意味だ」と明らかにした。また、「慰安婦企画展を通じて過去の過ちを反省する機会にし、女性に対する暴力を終息させなければならない。そうしてこそ人類が進化する」と強調した。

展示会の集客について、初日の段階では600人と各媒体で報じられていたが、4日間全体では1万6000人が集まったという。
仏アングレムの慰安婦漫画展…「涙が出る、これは犯罪」(2) | Joongang Ilbo | 中央日報

韓国漫画連合と韓国漫画映像振興院、女性家族部が1年余り精魂を込めて準備した展示会には4日間で1万6000人余りが集まった。

展示会期間中、フランス美術史学界の権威であるRaphael Cuir国際美術評論家協会長が漫画展示場を訪れた。女性人権・美術史学界の世界的専門家である彼は「慰安婦女性はこれまで色々な理由で国際社会に自身の被害を話す表現の自由を剥奪されていた」として「生存している被害女性には時間がいくらもないのだから、今すぐ正しい歴史を記録しなければならない」と話した。

協会長のコメントからは、被害者の言葉は主観的な内容であっても、だからこそ物語という表現に乗せる意味がある、といったことを感じた。作品で描かれたことが主観であると理解し、そこから真実をすくいあげるのは、読者の仕事だ。
この中央日報記事には、韓国側の展示に対する抗議が、現地においてどのように見られていたかを感じさせる記述もある。もちろん、他の展示場にも警官が配置されていたかもしれないが。

組織委とアングレム市は韓国の展示作品が毀損される事態を防ぐために、アングレム警視庁所属の私服警官8人を展示場に常時配置するなど韓国の立場を最大限配慮した。フランスの漫画市場の3分の1を占めるほど影響力が大きい日本だが、歴史的真実という水の流れは変えられなかった。

そして漫画を好む日本人のひとりとして、歴史的真実の流れを変えたい日本人ばかりではないということは書いておきたい。

*1:スライドショータイトルはエキサイト翻訳を手直しせず引用した。

*2:http://news.tbs.co.jp/20140131/newseye/tbs_newseye2116261.html

*3:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20121230/1356962682

*4:文章はエキサイト翻訳を手直しせず引用した。