法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドキドキ!プリキュア』第49話 あなたに届け!マイスイートハート!

〜三日天下どころかアバン天下〜
ジャネジーを吸収しようとして即効でとりこまれてしまい、仲間から「手遅れ」あつかいされるベールの情けなさに大笑い。最後まで、シリアスにふるまおうとして情けなく終わるオヤジキャラクターであった。


ともかく、キュアハートに結集した力でプロトジコチューを浄化して、今作の戦いはいったん終わり。それでもプリキュアとしての戦いはつづく。
分裂後のレジーナとキュアエースそれぞれに独立した人格を認めて、アン王女が復活しないのは良かったと思う。そのまま王制から共和制に移行し、人間界でも主役の立場が一般人に交代していく展開も、“幸福の王子”の結末としては悪くない。
救われなかったジョー岡田が初代大統領に就任するのも、婚約者を失った代替というと良くないが、人間界に長く滞在していたことから異世界の住人としては見聞が広いはずで、王族とのコネクションも持っているので、それなりに妥当性はある。
ただ、人間界と異世界がつながったまま交流がおこなわれるようになった結末は、ちょうど最終回をむかえた『アウトブレイクカンパニー』を思い出したりして、微妙な気分になった。四葉財閥が経済的に支配する未来を幻視してしまう。そういえば四葉財閥の強権ぶりは、きちんと問題提起されないまま終わってしまったな。


最終回だけあって、映像にも力が入っている。古賀豪シリーズディレクターが演出し、キャラクターデザイナーの高橋晃が作画監督。前半の建造物を使った個性的な乱戦から、後半の宇宙まで飛び出す決戦まで、縦軸を重視したアクション演出が面白い。
原画は高橋晃所属のスタジオダブから少人数がクレジットされているだけで、特別なアニメーターが入っていたわけではないが、良好なアクションが展開された。作画作業の速さと安定性で知られる制作会社の実力が画面に出ていた。
ただ、アン王女の幻影が青空に浮かびあがる場面あたりは、どうしようもなく昭和のにおいがただよっていたか。


全体の感想としては、とにかくアクション面の弱さと、ただよう昭和感が印象に残っている。特に古賀豪SDという情報で期待していただけに、戦闘がコメディチックなところは良いとしても、アクション作画の弱さは落胆するしかなかった。参加スタッフのリストをながめても、今作は特に人材不足だったように思う。
企画当初には存在しなかったという敵幹部レジーナは後づけするだけの価値があったと思うし、それゆえ中盤と終盤のまとまりは良かったが、逆にいうと他の対立構図があまり機能していなかった。主人公が人格でも能力でも欠点がなさすぎて葛藤が生まれず*1、かといって怪物化させられる人々も悪ではないと明記されてつづけたので葛藤がやはり生まれない。
昭和感は山口亮太シリーズ構成の作風だが、それを映像上の魅力にまで昇華できていなかった。東映アニメーション制作では、意図的に古いのか新しくできないのか、印象として区別が難しい。

*1:実際には、無知な描写や根性論で動いている描写も増えていったのだが、そうした欠落はドラマを駆動させず、あくまでギャグ描写や説明台詞の前ふりとして消化された。