お正月SPとして放映された、歴史フェイクドキュメンタリー番組シリーズ番外編。
題材は世界文化遺産として認められた和食から、鰻の蒲焼を題材として選び、秘伝のタレが生まれた過程を追う。
伝統的な鰻屋に取材して、時代の荒波に飲まれかけている大正時代と、屋台として出店したばかりの江戸時代を行ったり来たり。そうしてタレに使われる醤油の位置づけや味付けの好みから、東西の食文化の違いを描いていった。
今回はタイムスクープハンターの取材が歴史を変えかけてしまうというサスペンスも描かれた。
やはり気になるのが、関東醤油の発達等を描きたいにしても、なぜ鰻なのかということ。
以前から資源危機が叫ばれている食材であり、洋食やカフェーの人気に押された大正時代などとは比べものにならないほど鰻屋の伝統が消えかねない状況にある。
種の異なるインドネシア産に活路を見いだそうと伝えている記事ですら、末尾で現地漁師の長から「20年前の半分くらいかな」と資源が減少しているというコメントを引き出している。
http://mainichi.jp/select/news/20140101k0000e040209000c.html
事業は5年目で、地元で150人の雇用を生み出している。昨年は計70トンのかば焼きを日本に輸出し、大手スーパーで1匹1000円前後で販売。今年は150トン超を目指す。繊維原料や水産物の貿易に長年携わってきた千速さんは言う。「ウナギを誰も買えないような値段にしてしまったら、サプライヤー(供給者)として失格だ。(価格高騰で需要が減った)本マグロのようにしたくない」
バラエティ番組でも、昨年にはテレビ朝日系列の『ナニコレ珍百景』で天然鰻の保護活動が紹介されたりしていた。
http://www.tv-asahi.co.jp/nanikore/contents_pre/collection/131127.html*1
天然のニホンウナギはとても珍しく、市場に出回る高価なニホンウナギも99%は養殖だという。
天然のニホンウナギは太平洋で卵からかえって日本の川にやってきて、約10年で成長して再び海に戻るそうなのだが、近年は環境の悪化や乱獲により数が激減しているそう。
5年前、1匹のニホンウナギが用水路にいるのを発見したことがきっかけで、ウナギが暮らせる美しい川を取り戻そうと地域住民の方々みんなで清掃活動を続け、ついに今年、たくさんのウナギが生息する川に戻ったそう。
たとえば最後に平成時代……もちろん取材する未来人の視点では過去……にやってきて、秘伝のタレを茄子などに用いて変化しながら伝統の食文化を守ろうとする姿を描いたりすれば、ひとつのエクスキューズになったかもしれない。
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題材への踏み込みの甘さは資源問題だけではなかった。せっかく江戸時代に蒲焼が広まりはじめた瞬間を取材しているのに、平賀源内によって夏の風物詩になったといったような、有名な歴史話への言及もない*2。これなら鰻以外の醤油を使った料理なら何でも良かったのではないか、と最後まで見て感じてしまった。
なお、時系列としては映画版の後におこなった取材らしいが、特に物語における関連性は示されず。説明されないまま終わった女性ナビゲーターのそっくりさんがそうなのかもしれない。