法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒シリーズ X DAY』

ドラマシリーズ『相棒』のスピンアウト映画。サブレギュラーキャラクターが映画オリジナルキャラクターとバディを組み、銀行の情報漏洩にまつわる事件を追う。12月22日に日曜洋画劇場で放映されたものを視聴した。


映画上映時のドラマ本編で、映画宣伝をかねて同じモチーフを用いた回「ビリー」があった。大規模に進行している嘘を暴こうとして殺された映画と、せせこましい嘘を守ろうとして殺されたドラマ。見比べてみると好対照な作りになっている。
『相棒season11』第17話 ビリー(と、安倍晋三首相Facebookの話) - 法華狼の日記
タイトルにも使われている「X DAY」とは、日本経済の崩壊が予測された日のこと。信用によって成り立っている経済が崩壊する危機と、その予防策にからんで、暴こうとする者や便乗しようとする者が事件を起こす。そして全てを隠蔽しようとして、経済界と国家機関が現場を抑圧していく。起きていることは仰々しい陰謀劇のようでいて、大規模な取り付け騒ぎ対策と要約すれば現実的ではある。あまり意外性はないが、ドラマ映画のモチーフとしては無難なところ。
ちょっと面白かったのが、ドラマ本編ではバディの探偵役をつとめている杉下右京の立ち位置。休暇で英国旅行中なためほとんど登場しないが、少しだけ捜査を手助けする。その時、日本経済が破綻すれば日本だけの問題ではすまされないと一言いう。杉下の基盤が英国にあるから、これまで日本警察の思想と異なる視点から事件を追うことができたのだろう、と感じられた。たった一言で映画本編の世界観を広げつつ、ドラマ本編を鑑賞する時の視野を広げさせてくれる。
他のレギュラーキャラクターも普段とは違うパートナーを組むことで、違和感ないレベルでドラマ本編とは異なる魅力を見せていく。キャラクター性で楽しませるドラマ映画としては充分な内容。


映像演出はドラマの延長上だが、同時並行でおこなわれる捜査をカメラワークでつなぐ手法や、クライマックスの追跡劇はけっこうな見せ場だった。
ただ、クライマックスは映画の象徴と犯人確保が重なりあうポイントなので、札束がばらまかれる経緯に映像の説得力か物語上の伏線がほしかったかな。