法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

埼玉県での台湾への修学旅行に、政治家が介入したとのこと

自民党議員が中心となって指導と改善を県に求め、学校に対しては感想文提出などを求めたりしたという。まず埼玉新聞が報じていた。
http://www.saitama-np.co.jp/news/2013/12/18/01.html

 県議会の文教委員会(田村琢実委員長)は17日、県立朝霞高校の修学旅行に問題があったとして「県立高校の社会科教育の指導徹底を求める決議」を賛成多数で可決した。県教育委員会と県教育局に対し指導と改善を求める内容で、審議の過程では修学旅行に参加した全生徒の感想文提出を要求しており、一部の委員が「政治的圧力になりかねない」と異議を唱えたほか、共産党県議団が抗議した。

 決議案は自民の石井平夫委員が提出。委員長を除く委員10人のうち自民5人、刷新と無所属の各1人が賛成し、民主、公明、無所属の各1人が反対した。

 県高校教育指導課などによると、朝霞高校は昨年12月5日から3泊4日の日程で台湾で修学旅行を実施。2年生約320人が参加し、金の鉱山や博物館などを見学したほか、太平洋戦争の空襲で父親を亡くしたという游顕徳さん(男性)から当時の話を聞いた。生徒は修学旅行後、感想文を書いた。

 16日から開催された文教委では、自民の白土幸仁委員や刷新の鈴木正人委員らが朝霞高校の修学旅行に関し、生徒への事前学習や「修学旅行のしおり」、現地学習を問題視。「事前学習で歴史的事実に疑念があるDVDを見せたり、しおりには歴史的事実と相反する未確定やねつ造の記述がある」などと指摘し、現地でも「反日思想を思わせる男性の話を聞かせ、しょく罪意識を植え付けた」などとした。

太平洋戦争で空襲被害にあった証言者を反日思想として拒絶するとは。もっとも、補償を求める被爆者が反日あつかいされる昨今の風潮から考えると、そう不思議でもないか。
しかし埼玉新聞では「歴史的事実に疑念のある」という内容がはっきりしない。


かわりに産経新聞自民党議員へ同調するような記事を出しており、感想文の内容や、何のDVDなのかうかがわせる記述があった。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/131217/stm13121722490005-n1.htm

 感想文には「お互いの歴史を知ることが平和への一歩だ」などの一般論から、「台湾の人を無理やり日本人にしたり名字を日本式にした」などと踏み込んだものもあった。鈴木正人県議(刷新)は「都合の悪い感想文を隠蔽しようとしているのか。全員の感想文がないと教育の効果を検証できない」と指摘した。

踏み込んだものという記述も一般的な歴史をそのまま書いただけだと思うのだが。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/131217/stm13121722490005-n2.htm

 文教委は「修学旅行の事前学習に捏造(ねつぞう)が指摘されているNHK番組を活用し、しおりには歴史的事実に反する記述をし、現地では反日思想を思わせる方の話を聞かせて贖罪(しょくざい)意識を植え付けた。県教委には指導を徹底するよう強く求める」などとする決議を賛成多数で採択した。

問題のDVDがNHK番組だとすると、おそらく『NHKスペシャル』の「アジアの"一等国"」だが*1、つい最近の高裁判決において一部の表現と遺族への配慮が問題視されたものの、他の訴えは全て棄却されていたはずだ。
「人間動物園」で踊る「黒いヴィーナス」が踊る - 法華狼の日記
それにしても、植民地にした地域で不都合な証言を聞いたり、贖罪意識を学生に持たせたりしてはいけないとは、「修学」という言葉の意味を考える。

*1:コメント欄で教示いただいたが、別の産経新聞記事に明記されていた。http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131217/crm13121708200005-n1.htm