人力検索はてなで「魔法少女」というお題で創作回答をつのっていた。設定や一場面でもいいという内容。
番外編【人力検索かきつばた杯】 魔法少女を作ろう!! 参考質問… - 人力検索はてな
広く興味をひけそうなお題だったが、文字表現が基本の場ゆえ独自性を出すのが難しかったのか、締め切りが厳しかったのか、あまり回答数が集まっていなかった。
結果として、最も文章量が多かったものがベストアンサーを獲得した。百合っぽいバトルロワイアル物といったところ。その全文を下記に転載した。
しかし、やはり絵がついていないと内容以前の華に欠けると感じられるかもしれない。
『MAGICAL SEASONS +α』
それぞれ春夏秋冬の属性を受けつぐ魔法少女。
地脈の流れを乱す怪物エコサイドに対して、自然の意思を魔力へ変えて戦う戦士たち。
たがいを信じ、たがいを守り、たがいを導き、たがいを見る。
四人の少女は一心同体。
そのはずだった。
だが今ここに魔法少女は五人いる。
エコサイドの生みだした偽者が一人いるはずだが、誰なのかがわからない。
本来ならば誰がどの季節を受けついでいるかは自然と決まる。その属性を名前にすることで、魔力の流れを整えることができる。しかし一人多すぎる今、自分自身の属性すら感じとることができなかった。
しかたなく、五人はそれぞれのカラーにあわせた名前で呼びあうことにした。
今夜もまた、寝静まりかけた都市の闇で、魔法少女とエコサイドが戦っていた。
魔法でつくりだされた光弾が路地裏を照らし、強化された肉体でふるわれる杖が槍のようにエコサイドの急所をつらぬく。
戦っている少女はたった一人。しかし苦戦しているようすは全くなく、冷ややかな表情のまま、巨大な怪物を消滅させた。
弱体化しているとはいえ、魔法少女が怪物に負けるはずがない。だからこそエコサイドは偽者をおくりこんだのだ。
怪物の消滅を見とどけた少女の背後に、四つの影が降りたった。
「また今夜も、一人で終えてしまったのかしら?」
影の一つが、魔法少女の背中に声をかける。
ふりむきもせず冷たい声が返る。
「もとより私は、貴方がたの誰一人として信用していない」
シーズンアクア。無敵の技量。
スカイブルーとホワイトを基本色として、アイスブルーの差し色が入ったワンピース。
怜悧な表情、長身痩躯。とぎすまされた刃のような立ち姿。清流のように美しく艶やかな長髪が背中へ垂れている。
絶対の正義があると考え、先頭に立って怪物と戦う。仲間を待つことはない。ひとりで戦う姿を見せれば、きっと本物と信じてもらえるはずだと願っているから。
とがらせた口から文句がもれる。
「そっちが勝手に先行してんだろ。俺たちにも敵を残しとけよ」
シーズンブラッド。超人の肉体。
オレンジとクリムゾンの、動きやすそうなジャケットとスパッツ。
表情も体躯も、小柄な少年のよう。せっかく出てきたのに敵がおらず、ありあまった元気を発散できなくて、とりあえずシャドーボクシング。
とにかく戦いたい、暴れたい。魔法は肉体を強化させるためだけに使う。難しいことは考えられないし、考える意味がないと思っている。いっしょに戦いさえすれば、その瞬間から仲間になれると信じている。
ため息とともにおだやかな声。
「はやる気持ちは理解しますが、一人で戦うのはやめましょう。疑われたいわけではないのでしょう」
シーズンマロン。博学の術師。
ふわっとパニエで広がった、柔らかそうなクリーム色のエプロンドレス。
ひそめられた細い眉。ボリュームのある栗毛。包容力を感じさせる豊満な体型に、おとなびた表情。
いつも中心に位置して、全員に目を配り、魔法少女として導こうとしている。優しげな表情を崩すことなく、今は真意を隠そうとしている。弱すぎる敵を一人で倒してみせているアクア。信用をえるために茶番を演じている偽者を名指しするのは、しっぽをつかんでから。
消え入るようなつぶやき。
「他人を信用しない人間が、他人から信用してもらえるわけ、ないよね……」
シーズンヴィオレ。最強の魔力。
パールホワイトのフードとマント。ゴールドとヴァイオレットの縁取り。
小柄な体躯。伏し目がちな瞳が右に左にせわしく動く。まるで人間に馴れていない野生の小動物。
普段の言動から、アクアを怪しんでいるのだと周囲から思われている。しかし本当に怪しんでいる相手は、自分を可愛がってくれているマロン。いつのまにか中心にいて支配している。野生の勘がおびえを生み、いっそうマロンの保護欲をそそる。
しずんだ空気をごまかす笑い声。
「と、とにかく敵はやっつけちゃったんだから、みんなもっと喜ぼうよ!」
シーズンチェリー。凡庸の少女。
ピーチホワイトの基本色に、ローズピンクの差し色。少女趣味のワンピース。
よくある身長。ありきたりな体型。ふつうの顔。魔法少女らしさを満たしつつも、突出した個性はもちあわせていない。
平凡なのは肉体だけではない。その心も同世代の少女とかわりばえがない。ある時に与えられた魔法の力。使いかたなんてわからない。他の魔法少女に隠れて、言葉で応援するばかり。コサイドと命がけで戦うなんて怖すぎる。他に戦える人間がいるんだし。それより何より、怪物よりも強い仲間が怖い。どれだけがんばっても、みんなが偽者に見えてしまう。
だからこそ、口先だけの言葉で恐怖を押し隠し、勇気をふりしぼって戦いの夜をやりすごす。
シーズンチェリーの台詞を聞いて、シーズンアクアが肩の力を抜いた。ふっと微笑み、無言で一礼。そして大きく跳躍して姿を消す。
一瞬だけ見せた笑顔、その凛とした美しさに、なぜかシーズンチェリーの顔は赤く染まった。
やがて残った四人もそれぞれ別れの言葉を口にし、夜の街へ散っていく。変身したままなのは、偽者が隠れている以上、魔法少女の仲間に対しても正体を明かすわけにはいかないためだ。だから普段はどのような姿をしていて、どこの街ですれちがっているのか、少女たち自身も知ることはない。
今はただ、次の戦いにそなえるため日常へ戻っていく。
いつわりの仲間に背中をあずけながら。
たがいを恐れ、たがいを探り、たがいを蔑み、たがいを愛す。
いつか仲間になる日が来ることを信じて。
砕けた心をかきあつめるように。
魔法少女は戦いつづける。
To be continued...
もちろん続きを書くつもりは当面ないが、一応の落としどころを考えてはいる。
この後の展開としては、一話完結で敵を倒しながら、命を助けたり助けられたり、足をひっぱったり仲間割れしたり、少女同士の愛憎劇がくりひろげられるといったところ。
設定的な真相としては、実は魔法少女が四人しかいないという伝説こそがエコサイドの模造した偽史かもしれないとか、怪物エコサイドは五人目の魔法少女の使い魔であり五人目自身は記憶を失って仲間になっているとか、そんな感じで二転三転。
むろん、最後まで書きあげないと作品として成立しないのも確かではある。これくらいの設定や発端だけなら書くのは簡単だ。
なお、半分の設定は、『スイートプリキュア♪』を放送していたころに思いついたものを改変して流用。
ぼくのかんがえたぷりきゅあ - 法華狼の日記
さらに半分の設定は、『六花の勇者』からインスパイアされたもの。もちろん真相や舞台状況や人間関係は違うが、最大の個性である偽者が仲間にまぎれこんでいるという状況は同じ。
『六花の勇者』山形石雄著 - 法華狼の日記
上述の「この後の展開」は『六花の勇者』を読む途中で予想していた複数の真相から選んだものだったりする。