法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season12』第1話 ビリーバー

杉下右京の新しい相棒としてseason11で登場した甲斐享が、陰謀論やオカルトにはまっている人々、いわゆるビリーバーの集まりに参加した。その謎を杉下が追う。
もちろんビリーバーの大半は、911陰謀論や月着陸陰謀論といった使い古されたトンデモを主張するだけにとどまる。しかしビリーバーに接触し、甲斐から真意を聞き出した右京は、南米の誘拐事件にまつわる陰謀論の存在を知る。
そして警察庁次長の甲斐峯秋が誘拐された。彼は甲斐享の父であり、杉下を手駒としてあつかおうと策謀する警察権力の象徴であり、さらには南米の誘拐事件における陰謀の中核と疑われていた。


season12の初回2時間SP。もちろん物語そのものがトンデモなのではなく、トンデモを題材にした物語だった。
陰謀論に対して、あっさり理屈で切り捨てたかと思えば、一理を認めたりもする距離感が面白い。もともと警察や国家権力の陰謀を何度となく描いてきたドラマだけに、ただ陰謀を全否定するのではなく、ある程度まで検証しておこうとする態度は一貫性として必要。
露骨にニコニコ生放送をモデルにしたSNSを登場させながら、コメントが陰謀論の賛美一色で染まっていないところも、同種のドラマに比べて圧倒的にリアリティがあった。ほとんどがツッコミを入れていたり、そもそも人が集まっておらず過疎ぶりを揶揄するコメントが流れたりと、見た目にとどまらないインターネットの雰囲気をよく再現している。
陰謀論にはまった人々、いわゆる「ビリーバー」を愚かでありつつ善良な若者と位置づけていたところも興味深かった。


ただし、犯人像は予想範囲内かつ考えが浅くてつまらないし、誘拐事件の解決も腰砕け気味。甲斐峯秋の傲慢と裏腹のプライドが表現された結末は面白かったのだが、事件そのものの面白味とは関係ない。
劇場版第1作の放映をひかえているためだけでもないだろうが、亀山薫の名前を杉下が口にしたり、レギュラーキャラクターのドラマにしぼるため、事件の規模は小さくとどめたのだろうか。