法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世にも奇妙な物語'13秋の特別編』

奇妙な味の短編をまとめたオムニバスドラマSPシリーズ。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2013/130927-382.html
今回は5作品のうち4作品に原作があるが、どれも未読。けっこう大胆にジャンルやオチを変えることが多いドラマなので、どこまで原作にある描写か見当がつかない。


「0.03フレームの女」は、小中千昭原作の短編ホラー。
ドラマ映像のデジタル処理に追われていた主人公が、存在しないはずの1フレームに奇妙な女性が映っていることに気づく。何か叫んでいるような女性の姿。主人公はデジタル処理で女性を消さず、逆に映像にずっと映しつづけるようイタズラしたことから、惨劇がはじまる。
ベタベタなJホラーを短編に凝縮したような作り。アクションもあるし雰囲気も出ている。何より、恐怖をもりあげる核となる女性が、ちゃんと恐ろしげに見える。しかし、女性が何かを叫んでいて伝えたがっているという謎で物語を引っぱっているのに、真相にひねりがなさすぎて腰砕け。消そうと奮闘する主人公らを止めていたのだから、そりゃ「消すなー!」と叫ぶだろうよ。
せめてオチに女性が叫んでCMに行くのではなく、主人公が自然に察するようにすれば恐怖が持続したと思う。恐怖に見せかけて笑わせにくるのは小中脚本らしくもあるが。


「水を預かる」は淺川継太原作。この作者は名前すら知らなかったが、原作はもっと長く悩む小説らしい。
アルバイト仕事を全てやめ、電気も止められた生活をしている主人公は、才能の枯渇しつつある舞台脚本一本に仕事をしぼろうとしていた。そんな時、主人公は隣に住む女性からペットボトルに入った水を預かる。よく幻覚を見る癖のある主人公は、虚実の境にたゆたいながら、ペットボトルの正体を知ろうとして、思い悩む。
全体のオチはベタベタだが、舞台劇らしいコントはよくできていた。ある存在について、録画を見返すと、水を預かる場面にちゃんと映っていた。そして全体の真相はショートショートとしては極めてベタだが、それを映像として見せるVFXが完璧。EDロールでこの「水を預かる」だけ別けてクレジットされていたほど、力が入っている。本編の美術セット等もいい。監督は石井克人


「人間電子レンジ」は竹本友二マンガが原作。
人間を心理的に熱くさせる巨大電子レンジを使って、さえない中年オヤジが邁進する姿を描く。
尺が最も短く、勢いだけで突っ走って、ひねりも何もない。後味は悪くなくてオムニバスの箸休めにはいいかな。


「仮婚」はドラマオリジナルストーリー。
働く女性をつづけながら結婚に興味もある主人公が、結婚相談員に「仮婚」というシステムを勧められる。エコノミー、ビジネス、ファーストの各クラスの男性と数日間だけ結婚生活を試してみる主人公だが……
フリーターのエコノミー夫は、最も好感の高い性格ながら、何かの夢を持っている。実際に結婚すると夢にふりまわされる展開か、それとも結婚をあきらめると大成功する展開か、あるいは物語の枠組みそのものが……終盤までの展開と人物描写がベタベタなので、見ながら複数の展開を想像してしまい、オチに驚くことができなかった。まあ、あそこまで努力できるなら幸福になることもできるし、それ自体が悪いことでは全くないだろう。


ある日、爆弾がおちてきて」は古橋秀之原作。
空から少女が落ちてきて、爆弾と名乗り、ハイテンションに主人公をつれまわす。その少女に、かつて一度だけつきあった少女の姿を見いだす主人公だが……
導入部分は、いかにも典型的なライトノベルにあえてしたてたかのよう。しかし若き日の少女の思い出に伏線をおりまぜて、世界を破壊する爆弾が生まれた意味をドラマとして描いていく語り口は巧み。オチも定型的ながら、きちんと流れに乗った結末なので楽しめた。惜しむらくは、ちょっと女優がライトノベルらしい軽いキャラクターを演じるには、あまり向いていないと感じたところ。