法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドキドキ!プリキュア』のキュアエースは必要とされなかった子供?

第23話で登場した、キュアエース。変身後は年長の姿と性格をしているが、正体は幼い少女。その本名、円亜久里
実は主人公より昔からプリキュアとして戦っており、変身後だけでなく変身前から先輩としてふるまい、他のプリキュアを教えみちびこうとふるまう。


その「あぐり」という名前の語源だが、「あがり」や「あまり」から来ているという。私が語源を知った山岸涼子『鬼』という短編マンガでは、「あく(飽きる)」という説が語られていた。
どの言葉から来たかは諸説わかれているが、どれも不要という意味は同じ。たとえば跡継ぎの男子がほしいのに、女児ばかり産まれた末につける。つまり「スエ」や「トメ」といった古い女性名と同じ意味だ。
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日本国語大辞典』だと菅江真澄の随筆をひいている。東北方言に「あふれる」の意味でアグルがあって、それにちなんだ女性名がそちらの方に多いという(『あぐり』の方は岡山だが。他に、喜田貞吉という人が「あまり」の転じたものと言ってるそうだ)。私はまた、双六のゴールは「もうこれでお終い」の意味でアガリというから、アガル・アゲル・アグ(上)などと関係があるのかと思ってた。でもアグリだと活用形としてはでてこない。別語だ。

1997年のNHK朝の連続ドラマ『あぐり』や、吉行あぐり氏による原作エッセイでも、そうした語源が言及されていたそうだ。
そしてキュアエースの家族構成がはっきりしていないことも裏読みをさそう。キュアエースの日常が初めて描かれる第27話において、住居が伝統ある旧家らしいことが判明した。家族の誰かは「あぐり」という名前の意味を知っていそうだ。そして画面に登場するのは祖母だけ。現在にいたるまで、父も母もはっきりとは登場しない。


もちろん、そうした背景が今後のストーリー展開に反映されるとは限らない。そもそも、制作スタッフがどこまで語源や由来を考えてネーミングしているのかわからない*1
しかし語源を知ってから見ると、まだ幼いキュアエースが他のプリキュアと対等以上になろうと奮闘している理由もわかる気がする。「あぐり」と名づけられた自分の存在価値を示すため、あえて強くふるまっているのかもしれない。

*1:ちなみにシリーズ前作の『スマイルプリキュア!』第19話では、自分の名前の意味を調べるという課題が学校で出され、印象深いエピソードとして完成されていた。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120610/1339367215