法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『テルマエ・ロマエVI』

ローマ時代の浴室技師が、時空を超えて現代日本へ迷いこみ、何の変哲もない道具や風景に驚くギャップで笑いをさそう、タイムスリップ風呂マンガ。
今巻において、ついにヒロインと主人公がむすばれ、主人公に無理難題をあたえてきた皇帝が理想の風呂につかりながら最期をむかえる。



苦味の残るハッピーエンドとともに、テーマにも絵として答えを出した最終話ではあった。これまで日本の文化と技術をローマ人が賞揚して模倣する一方だったのに、現代の日本人側がローマの文明や技術に驚嘆する逆転も描写され、日本文化の賞揚だけでは終わらないアクセントとなっていた。
しかし一応はきれいに終わっているはずなのに、いくつかの要素に決着がついていないと作者自身も後書きでのべているくらい、消化不良な印象を残す結末でもあった。


もちろん、いくつもの解決していない要素を残しながら見事に完結したと思わせるマンガ作品も数多くある*1
やはり作者自身も書いているように、あくまで一発ネタとして二巻ほどで完結しておけば、完成度は高くなったろう。一発ネタならば適当なタイムスリップ設定もギャグとして効果的だったのだが、長期ストーリー進行を支える基盤としてはもろすぎた。
浴場建設も漫画執筆も基礎をしっかりしていないと全てが無駄になる。残した要素に決着をつける新連載をはじめるそうだが、しっかり設定を組みなおさないと傷を広げるだけになるだろう。

*1:ぱっと思いついた範囲では『BANANA FISH』『寄生獣』あたり。