法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『殺しの烙印』

1967年の鈴木清順監督作品。炊きたての白米の匂いに執着する主人公は、ランキング3位の殺し屋。他の殺し屋ランカーに襲撃されたり、変な女に誘導されたりして、いつの間にか追いつめられていく。


駄目な時のタランティーノ映画というか、娯楽にてっしきれない時の押井守作品*1というか……
キメキメのレイアウトは悪くないし、狙撃戦などは当時にしては手間がかかっていて緊張感もある。いくつかの暗殺アイデアも面白く、美女*2のヌードをおがめたりと、全体にサービスがちりばめられていたから鑑賞中は飽きない。そのまま最後まで素直に殺し屋ランキング勝負を描けば、ゲーム的で空虚な設定も先端的に感じたかもしれないのだが……しかし観念的な独白や状況を無視した絶叫をダラダラと入れて、アクション映画としてはダルい作りになってしまっている。
その観念性に当時の若者が熱狂してカルト化したという逸話になるほどと思いつつ、現在から見るとカルト映画としても古びている。当時の炊飯器のように、中途半端に古くも新しくもない小道具が目につくためか。

*1:事実、実写監督作品の第1作『紅い眼鏡』の引用元とされている。

*2:真理アンヌの美しさは今見ても凄い。