法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『美少女を嫌いなこれだけの理由』遠藤浅蜊著

まさにライトノベルに出てくるような外見をもった種族「美少女」が、人類と共存している世界。美少女は、人間に奉仕することに喜びをおぼえる本能を持ち、それぞれキャラクターにあわせた特殊能力を持っている。
美少女の父と人間の母の間に生まれた主人公の少年は、ある日から半官半民組織で美少女2人の補佐をすることとなった。それから美少女と人間社会の橋渡しをするための、悲喜こもごもなお役所仕事の日々がはじまる。


2011年に第2回『このライトノベルがすごい!』大賞で栗山千明賞を受けた作品。
いかにもライトノベルらしく良い意味で頭の悪い設定だが、美少女という異種族と共存する社会を意外なほどていねいに描いていた。たとえるなら異星人と共存する社会を描くSFに近い味わいがある。登場する美少女の内面も、老若男女で異なる個性を持っており、表紙に登場する美少女などは中年オヤジまるだしで、そのギャップが面白味を生んでいた。まるで中年オヤジらしい言動そのものも、どうしようもないがゆえに好感を持てる。
おしむらくは、とってつけたような戦闘を終盤に入れていること。美少女の特殊能力を活用した戦闘描写そのものは上手だし、クライマックスにライトノベルらしいサービスを入れる作者に器用さを感じたが、それまで田舎の役所仕事をせせこましく描いていたため、雰囲気の落差に面食らった。